「お前のおじいちゃんはな、それはそれはすごい神姫オーナーだったらしいぜ」
「アニーソン、この子にいつまでそんな話しをするの?」
「いいんだよ、エレンディア…俺の親父は本当にすごかったんだから!」
おじいちゃん…か。
学校は今は長い休みの時期だし、自由課題の宿題もあるから行ってみるか。
「タイムマシンは好都合な事に、こないだひいじじいが持ってきてたしな…」
なんだか面白そうだぜ。
待ってろよ、おじいちゃん。
あんたの強さってのを俺がわざわざ見に行ってやるぜ。
「『K』、まずはどうしたらいいのかしら?」
黒く長い髪を二つに結った神姫は、『K』と呼んだオーナーに向かって尋ねる。
「そりゃあ決まってんだろ…まずはあいつがどこまで出来るか試す」
「わたし、この古いネットワークシステム嫌い…」
黒いゴシックなドレスを着た小さい神姫は、うさぎのぬいぐるみを抱きしめながら呟く。
「・・・・・・・。」
銀髪をポニーテールに結んだ、赤目の神姫は無言で自身が持つライトセイバーの調子を確かめている。
「じゃあ、ちょっくら長休みの宿題をさせてもらうか」
この時代にはにつかわないような服装をした少年と神姫たちは闇夜の中、壊れてしまって煙が出ている乗り物のような機械に背を向けて走り出す。
そしてその直後、その機械は瞬時に姿を消した。
「た、大変な事が起きてるみたいだよ、ミニーソンくん!」
いつものように学校に向かって歩いていた僕に、後ろから走ってきたちまりちゃんがかなり焦った様子で話しかけてきた。
「先に学校に行った美音に聞いたんだけど、学校の校庭にすんごいものがあったんだって!」
すんごいものの所で、ちまりちゃんはかなり大袈裟なジェスチャーをする。
学校の校庭で一体何があったのだろうか。
「ちょっとちまり、ここでお喋りしてたら学校遅れるわよ!」
「二人共、早く走って走ってー!」
白い翼パーツをつけた、おばさん口調な姫子さんとアウラさんは僕とちまりちゃんの前を飛んでいる。
「すんごいものってなんだろう…シュクレ分かる?」
「お姉様用のセクシーな下着が…」
そう言いかけたシュクレは、ルセルの攻撃によって既に大人しくなっている。
「今は悠長に話してる場合じゃないんだ、早く学校いくよ!」
僕とちまりちゃんは校門が見えてきた所で、さらにダッシュして学校へ急ぐ。
「はーい、みんなこの穴には近付かないように!」
先生達が大きな声で、校庭の真ん中に群がった生徒たちに注意している。
その異様な雰囲気に、ちまりちゃんの言ってた事は本当なんだなと今さら思う僕。
「ミニーソンくん、ちまり達も行ってみようよ!」
ちまりちゃんに手を引かれ、僕たちも生徒たちの群れの中に入っていく。
「すいません…すいません…」
僕とちまりちゃんは、謝りながらその群れを掻き分け、先頭の方まで向かった。
そして、そこには…確かにものすごいものが出来ていた。
「何これ…クレーター?」
「かなり深いクレーターですね…一瞬でこんな巨大な穴をあけるなんて出来るんでしょうか…」
僕の肩に乗っていた二人の神姫は、その巨大なクレーターの存在にかなり驚いている。
「すごいねぇ…これ…ちまり、こんなの始めて見たよ…」
ちまりちゃん達もかなり驚いている、アウラさんなんか飛ぶのをやめてちまりの髪にしがみついている。
「ちまりおっそーい!」
後ろからちょっと低めな女の子の声がした。
その声に反応して、僕とちまりちゃんは声の主の方へ振り返る。
「もう、ちまりがあまりに遅いから、あたしも遅刻しそうよ!」
こんな状況ではみんな遅刻なのでは…と思う僕の目の前に、その女の子の顔があった。
「きゃ、ちまり~このカッコイイ子だれなのよ!」
僕の両手をギュッと掴み、嬉しそうな声をあげる女の子。
なんかものすごくドキドキする…
女の子は、肩より長い茶髪に、中学生なのにバッチリお化粧してて、制服のスカートもかなり短い。
ちまりちゃんとはかなり見た目が正反対な女の子だ。
「えっと、彼はミニーソンくん…ちまりの幼なじみだよ」
ちまりちゃんはそんな女の子様子に狂わされる事もなく、いつも通りな様子で僕の事を紹介してくれた。
「ミニーソンくんって、ちまりがよく言ってたすごく暗い子…?」
女の子はちまりちゃんと僕を交互に見ている。
いまだに僕の手を掴んだままの女の子は、少し驚いた様子で一歩下がった。
そこは危ない!
瞬間的に僕は握られていた手を振りほどき、女の子の腰をがっしり掴んだ。
「はぁ…はぁ…どゆこと?」
僕に抱きかかえる形になった女の子は、この状況を理解出来ていないらしい。
「あんた、今その巨大クレーターに落っこちそうだったのよ」
「それをミニーソンくんが助けたの!」
ちまりちゃんの頭の上に浮かんでいる姫子さんと、髪にしがみついたままのアウラちゃんが女の子に向かって言った。
「あ、ありがとう…君のこと、ちまりには暗い子だとしか聞いてなかったからびっくりしちゃって…」
女の子は今度は目をキラキラさせて僕の事をじっと見ている。
「さとるが女の子を助けるなんて…」
「なんか意外ですね、お姉様…」
僕の肩に乗ったままの双子が、さりげなく失礼なことを言っていた気がするが、
目の前の女の子のせいで心臓がバクバクしてる僕の耳には入ってこない。
「えっと、マスターは美しい音と書いて、みおです」
「よろしくね、少年!」
女の子の胸ポケットから、ルセルやシュクレと同じ白髪の神姫が二人出てきた。
この子たちも大きい子と小さい子の二人いる。
「こら、ゆきう!アタシは自分で自己紹介したかったのにー!」
美音ちゃんという名前の女の子は、胸ポケットにいる自分の神姫に軽くデコピンした。
「ほら、お前らいつまで話してる!他の生徒たちはもう教室だぞ!」
先生の言葉にはっとする僕たち三人。
周りを見ればあれだけクレーターの周りにいた生徒たちの姿はなく、そこにはもう先生と僕たちしかいない。
「早く行こう、ミニーソンくん!」
「なんだかまだお話ししたかったけど、また後でね…悟くん、さっきは本当にありがとう!」
走っていく二人の女の子についていくように僕も校舎に向かって全力で走った。
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