「あ、えと…美音ちゃんはどうして僕の部屋に…?」
僕の部屋に平然といる美音ちゃんが信じられない。
さっきバイバイして別れたはずなのに、僕より早く僕の部屋に来て、そしてもう着替えていた…?
これはもう深く考えすぎると頭がパンクしてしまうからやめよう。
とりあえず、僕の部屋に来た目的を美音ちゃんに聞かなきゃ。
「なんで、アタシがここにいるか気になってるんでしょー?」
美音ちゃんは僕のベッドに腰掛け、クローゼットの前にいる僕を楽しそうに見ている。
そして、美音ちゃんには僕が考えているような事なんて全てお見通しらしい。
「この子達がね、悟くん神姫ちゃん達にすごく興味があるらしいの」
そう言う美音ちゃんの目線の先には、僕のベッドの上で美音ちゃんの神姫たちと追いかけっこしているルセルとシュクレの姿が…
「わぁー誰か助けてよーなんかこいつ、セクハラしてくるー!」
小さい方の神姫・ゆきうちゃんに捕まったルセルは、ゆきうちゃんにのしかかられ、コチョコチョくすぐられている。
「お姉様、今助けに……あ、やめて下さい…う…」
姉のルセルを心配しているシュクレは、大きい方の神姫・雪卯さんに大きな胸を揉まれている。
なんて光景だ…美音ちゃんは自分の神姫にこんな事をさせて楽しいのだろうか。
僕がまた考えにふけっていると、全身にあったかい感触が…
「わっ、え、美音ちゃん!?」
着替え途中だった僕の体に美音ちゃんがぎゅっと抱きついている。
もう僕の顔は茹でダコみたいに真っ赤なんじゃないだろうか…
「アタシはぁ…悟くんが気になってしょーがないの」
チュッと、僕の頬に柔らかいものが一瞬当たった。
もしかして、キスされた?!
女の子にキスされるなんて前代未聞の事態に、僕の頭は爆発しそうになる。
「だからね、悟くん…アタシとバトルしてほしいの…アタシの神姫が勝ったら、悟くんと悟くんの神姫たちはアタシ達のもの…」
美音ちゃんの可愛い声が僕の耳元に響く。
そんな風に言われてしまったら、ぼ、僕は…
「だ、駄目、さとる!ぼくはこんな雪ん子のものになんかならない!」
「そ、そうですよ、マスター!お姉様は誰にも渡しません!そしてこの私も!」
雪卯さん達にされるがままになっていたルセルとシュクレが、雪卯さん達を押し返し顔を真っ赤にしながら突っ立っていた。
仕方ない…二人のためなら、この勝負は負けるわけにはいかないな。
僕は勉強机に備えつけられている、液晶パネルに向かって叫んだ。
「レイニーさん、今すぐ神姫バトル出来るように準備を!」
液晶パネルに映ったピンク髪のメイド・レイニーは、ニッコリと微笑み返事をした。
「ほら、バトルならぼくたちは負けないって言っただろ?」
「お姉様はバトル以外ではうぶなお方なんです…そこが素敵なのですけど」
研究所のバトルシュミレータから帰ってきたルセルとシュクレは、六角形の武装のまま雪卯さん達にこう言った。
「ちぇー、ゆきうのスノボーの何がいけなかったわけ?」
「私のスノーボードでも敵わないなんて…」
完全に見た目装備の雪卯さん達は、かなり落ち込んだ様子で美音ちゃんの所に帰っていた。
「ぎゃーはっはっは!これは面白いっす!」
「こんな面白い戦闘、珍しいのです~」
「ちょ、ちょっと二人共、雪卯さん達に失礼ですよ…」
研究所の神姫である、希歌、リーシャ、フェリアの三人は、先程の戦闘のリプレイ動画を何回も見ている。
「確かに…自滅してしまっては、元も子もないですもんね…」
僕たちの戦闘を一部始終見ていたレイニーさんも、困った様子で苦笑している。
「あーもう、雪卯たちはどうしてスノボーにうまく乗れないのよ!」
美音ちゃんもあまりのひどいバトルに、かなりショックを受けているようだった。
そうして横目をやれば、ルセルとシュクレが毎度のごとくイチャついていた。
「お姉様、これでお姉様は永遠に私だけのものです!」
「だ、だから胸が苦しいんだよ~離せよ、シュクレ!」
いつの間にか素体状態になっていた二人は、シュクレがルセルを抱きかかえる形で抱き合っている。
確かにあの胸に挟まれたら苦しそうだ。
「アタシ、このまんまじゃ恥ずかしくて悟くんといれないわ…もう帰るっ」
雪卯さん達を鞄に入れ、顔を手で隠しながら美音ちゃんは研究所を出て行った。
「なんだか…台風みたいな方ですね…」
レイニーさんは、美音ちゃんが出て行ったばかりの扉を見ながらそう呟いていた。
「ルセルさんの武器もシュクレさんの武器も全く使われてない…本当に二人は何もしないでも勝ったんですね…」
武器や武装の整備担当であるフェリアさんが、ルセルとシュクレの武装を見ながらそう呟いていた。
「ふぅ…いい湯だなぁ…」
やっぱりどんなバトルでも勝てれば、かなり気分はいいもんだ。
美音ちゃんとのバトルが終わってから、レイニーさん達と夕食を食べた僕は疲れを癒すために湯舟に浸かっていた。
「ちょっとさとる!絶対にこっち見ないでよね!」
「マスター、お姉様の裸を見ていいのは、妹である私だけなのですよ」
僕の湯舟から少し離れた所に、レイニーさんが作ってくれた神姫用のバスルームがある。
バスルームと言っても、四方向が囲まれた小さい部屋のようなものに湯舟があるだけのものだ。
上から覗いてしまえば簡単に二人の入浴シーンなんて見えてしまうだろう。
「はいはい、僕は神姫の裸には興味はないんでね…」
見るつもりがなくて事故で見えてしまっても、そんな乙女の入浴シーンを見たら後で僕がどうなるか分からない事なんて分かりきっている。
僕は胸まで浸かっていた湯舟に、ブクブクと肩までじっくりと浸かった。
「ふふふ…チャンスね、これ…」
一人の女の子が静かに静かに、僕たちがいるバスルームに侵入したきた。
しかも女の子は神姫連れで。
僕のいる湯舟に近付く前に神姫のバスルームを見つけた女の子は、そこに自分の神姫を投入した。
「な、なんだお前ら…さっき帰ったんじゃ……いやぁぁっ!」
「お姉様、お姉様!あ、胸はやめて下さい…あっ、あぁ…!」
二人の神姫の叫びにハッとする僕。
いつの間にか湯舟に浸かりながら眠ってしまっていたらしい。
そして、二人の叫びに不安になって湯舟から上がろうとすると、腕を思いきり掴まれ引っ張られた。
「バトルには不意をつく…なんて戦い方もあるわよね?」
聞き慣れた声、もしかして美音ちゃん!?
裸の女の子を前に、僕はあまりの驚きに声が出なくなる。
「好きよ…悟くん…」
裸で抱きついてくる美音ちゃんの体に、何か違和感を感じるものがあった。
何かと思って、触れてみると女の子には絶対にないようなものが…
「やだ、悟くんてば、いきなり激しいんだから…」
真っ赤な顔で照れた様子の美音ちゃん、その美音ちゃんがまさか僕と同じ…
そこまで考えてしまった所で、僕はブクブクと湯舟に沈んでいく。
一体全体、なんだっていうんだよー!!!!
僕の叫びは湯舟の中で泡となって消えていく…
COMMENT
まさか男の娘だったとはー><
コメントありがとうございますー。
美音 「今まで隠しててごめんなさい…でも、可愛い男の娘もいいものよ(はぁと)」
悟 「美音ちゃんってば、諦め悪いな…」