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キャラクター紹介 |
用語集
※今回も東雲さんの小説よりキャラクターをお借りしております。すみません。
あれから一週間、僕は毎日のように神姫センターに通っている。
それでも、僕たちはなかなか勝てずにいる。
今の僕たちに一体何が足りないというのか。
そして、星夜くん達と僕たちはどこが違うというのか。
何も掴めないまま、ただがむしゃらに一週間が過ぎていた。
「どうして勝てないんだろう…いつも後一歩って所で負けちゃう…」
「マスターの戦略も間違ってると思えないですし、まだまだ私たち神姫が未熟だからという事でしょうか…」
「やっぱり僕の戦略が読まれやすいのかな…」
神姫センターから帰った後、夕飯やお風呂を済ませて寝る前にこうして作戦会議をするのはいつもの事になっていた。
「ちょっと待てよ…僕、あれから局長にもらった二人の説明書を読んでないじゃないか…」
色々とあってすっかりと忘れ去れてしまっていた、白魔型スノーフレークの説明書。
二人の名前を付ける時にチラっと呼んだだけで、それ以降は全く手をつけていない。
「ここにありましたよ、マスター!」
「なんでこんな所にやってんだよ、さとるー!」
ちょうど僕の部屋の床にいたルセルとシュクレが、探し物をベッドの下から持ってきてくれた。
部屋はいつもメイドが綺麗にしてくれているので、説明書は新品同様で綺麗なままだった。
「ありがとう二人共、それでは早速…ふむふむ…」
僕はベッドに腰かけると、二人が見つけてくれた白魔型スノーフレークの説明書を最初から読み始めた。
最初の方に書かれていたのは神姫の扱い方、それから二人のバトルスタイルやら、武装の説明などなど…
難しい言葉ばかりだと思い込んでいたが、読んでみるとかなり分かりやすく書かれている説明書だった。
そして、説明書の最後の方の項目には気になる一文が…
「リミッター解除…か…どういう事なんだろう、これ?」
「はい、マスターがリミッター解除の事が気になった場合、こちらに連絡させるようにと言われています」
「えー、ぼくはなんにも聞いてないよー」
僕の言葉に反応したシュクレは、いつの間にかベッドまで上がってきていて、僕の持っていた説明書をペラペラめくると、電話番号が書かれたページで手を止めた。
ルセルはシュクレだけがそう聞かされていた事にかなりショックを受けているようだ。
「マスター、こちらは24時間フリーダイヤルですからいつでも大丈夫ですよ」
僕が動くよりも先に、シュクレは僕の手に携帯を乗っけていた。
「なんか緊張するね、これ…」
いくら24時間大丈夫とはいえ、こんな時間にかけたら失礼なんじゃないかと僕は不安になりながらも通話ボタンを押していた。
トゥルル…トゥルル…
呼び出し音がかなりの時間鳴っている。
やはりこんな時間にかけるんじゃなかったと僕が通話を終えようとすると、かなり疲れた様子の男性の声がした。
「はい…こちらS.Project…神姫へのサポートは業界一の……」
「モニターからの電話だな、私が出る!さっさと変われ!」
疲れた様子の男性の声から、かなりテキパキとしたデキル女性の声に代わった。
この声…どこかで聞いた事があるような…
「あー、君は堂元悟くんだね?私はこのS.Projectの局長の周防だ、神姫たちに何かあったのかね?」
僕が思い出すよりも先に電話の向こう女性の方が先に答えた。
そうだった、この声はエスプロジェクトの局長さんだ。
ちょうどいいやと思って、僕は説明書で気になった事を局長に質問した。
「えっとですね、局長…説明書でよく分からない事ありまして…」
「なんだね、私なら何でも答えられるはずだ」
「最後の項目のリミッター解除というのは…」
僕の質問に一瞬、電話の向こうが無音になる。
そして、急に大きな音がして思わず、耳元から携帯を少し離してしまう。
「なんだと!?君はリミッター解除も知らずに、白魔型オーナーになったのか!
?」
まぁまぁ…と後ろの方で局長をなだめるような声が聞こえる。
「ご、ごめんなさい…バトルの方は本当に最近力を入れ始めたばかりで、毎日神姫センターに通っているのですがどうしても勝てなくて…」
局長をさらに怒らせてしまったらどうしようと焦る僕は、かなり早口で今の状況を一気に話した。
「なるほど…確かに君は神姫が苦手なようだったからな…そして、今は神姫たちとキャッキャウフフはしてるのか?」
キャッキャウフフという謎の単語に思わず固まってしまう僕。
キャッキャウフフとは神姫と仲良くする事ですよっと、電話の向こうで叫ぶ声がしたのでようやく理解出来た。
「えっと…ルセルとシュクレとは、それなりに仲良くやってます…」
ルセルとシュクレがいるだろう方向に目をやると、ルセルはふんっと僕から視線をそらし、シュクレは頑張ってと僕にジェスチャーしている。
「さっきのリミッター解除の答えだが…」
急に電話の向こうの局長の声が神妙なものとなる。
僕もその局長の様子に息を飲んで、緊張しながら答えを待つ。
「もっと神姫たちとキャッキャウフフする事だ…では!」
答えになってるのか分からない言葉を残して、その電話は勝手に切れてしまう。
ツーツーと通話が終わった事を示す音がむなしく電話越しに聞こえる。
「一体、どういう事…?」
僕の悩みがまたこうして一つ増えてしまった。
携帯をベッドに起き、ルセルとシュクレを見れば二人は今度はなぜだか笑っている。
僕が困っている顔がそんなに面白いのだろうか…なんだか少し悔しい。
電話が終わってからちょうどよく届いたらしいメールを知らせるため、携帯のバイブが震えている。
再び携帯を持ってメールをチェックすれば、そこには美音ちゃんからのメールがきていた。
「明日、デートしよ(はぁと)たまには気分転換も必要よ♪」
メールには美音ちゃんと雪卯さん達が全力で変顔してる写真が添付してあった。
思わず笑ってしまう。確かに明日は気分転換しようかな。
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