「いらっしゃい…君があいつの息子の悟くんか」
銀髪が綺麗でカッコイイ紳士が僕を迎えてくれた。
「パパ、悟くんカッコイイでしょ?学年の中でも成績はかなり上の方なんだから」
美音ちゃんは掴んでいた僕の手を離し、今度はパパと呼んだ男性に抱きついている。
このカッコイイ紳士が美音ちゃんのお父さんかぁ…
僕の父とは方向性もかっこよさも全然違うなと思っている、奥から今度は女優さんのように綺麗な女の人が出てきた。
「もうあなたってば…お客様をこんな所に立たせっぱなしなんて失礼よ、美音も」
綺麗な女の人はどことなく、美音ちゃんに似てるような気がする。
という事は、この人は美音ちゃんのお母さんかな。
僕がそう思った瞬間、綺麗な女の人は僕をとんでもないくらい広くて豪華なリビングに案内してくれながら言った。
「あ、私は美音の母の白鳥歌音です、どうぞよろしくね悟さん」
やっぱり美音ちゃんのお母さんだったか…通りで似ていると思った。
「あ、あの少年が美音の…」
「そうよ、パパ~アタシのボーイフレンド素敵でしょー」
玄関の方では、美音ちゃんと美音ちゃんのお父さんがまだ二人で話しをしていた。
というわけで…今日の休みは、美音ちゃんと先日約束していた美音ちゃんの家に遊びに行くというのでやってきていた。
「大したものではないですけど、よかったらどうぞ…」
リビングのかなり高そうなソファーに座っている僕に、美音ちゃんのお母さんはこれまたかなり高そうなケーキを勧めてくれた。
メイドさんがやってきて、紅茶も煎れてくれている。
「ここ、さとるの家よりもさらにすごいよねぇ…」
「私はお姉様とならこんな豪邸で新婚生活してみたいです」
あまりにすごい場所に来てしまったと恐縮しているルセルとシュクレは、僕の胸ポケットでボソボソと小さい声で話しをしていた。
「お、悟くんも神姫を持っているのか…うちの美音も神姫はすごく好きでな…」
「もうお父さん、悟くんはそんな事とっくに知ってるわよ!」
いつの間にかソファーに座っていた美音ちゃんとお父さんは、ルセルとシュクレを見てまた仲良く話し始めた。
「よかったら、神姫さん達も食べて下さいね」
美音ちゃんのお母さんは、神姫用のすごく小さくて可愛らしいケーキも用意してくれた。
今度は小さなメイド…というかメイド服を着た神姫がやってきて、二人分の紅茶を煎れてくれている。
「わぁ~ぼくたちも頂いていいんですか~頂きます!」
「メイド服いいですね…お姉様ならすごく似合いそう」
僕がポケットから二人を出して高級テーブルの上に乗せてあげると、ルセルは美味しそうに神姫用のケーキを食べている。
シュクレの方は神姫メイドに話し掛けて、メイド服の予備はもらえないかなんて交渉している。
なんだかすごく申し訳ないような気分になる。
「ふふ、気にしないで悟さん…こんな可愛らしい神姫さん見れて私嬉しいわ」
美音ちゃんのお母さんはニコニコと仏さまのような顔で微笑んでいる。
おかげで僕の心はかなり救われた。
「あ、悟くん~うちのママが昔アイドルだって知ってた?」
美音ちゃんはそう言うと僕の隣にやってきて、僕の手をぎゅっと握っている。
それを見た美音ちゃんのお父さんは、一瞬だけかなり不機嫌そうな顔になった。
「美音違うぞ、歌音は最初はアイドルから入ったが最後引退する時は女優だった」
「あら、そんな昔のこと話さないであなた…すごく恥ずかしいわ」
美音ちゃんのお父さんは今度はすごく自慢げな口調で話した。
そんな旦那さんの言葉に、お母さんの方はかなり照れている。
だからあそこまで美人さんなんだーと僕は一人で納得する。
「そして…お父様の方は国会議員なんですよ」
「大臣とかじゃないから、そんなに忙しくないのー」
いつの間にかルセル達のテーブルにいる雪卯さん達が、今度は美音ちゃんのお父さんの話しをする。
確かにどこかで顔は見た事あったから、きっと選挙の時のポスターかなんかで見たんだろう。
「こら雪卯、俺はかなり忙しいぞ、今日はかなり久しぶりの休日なんだ」
美音ちゃんのお父さんは、雪卯さん達にチョンチョンとデコピンをする。
「そうだ、悟さん…今日はうちで夕飯を食べて言ったら?」
美音ちゃんのお母さんは急に思い立ったようにそう言って立ち上がると、近くにいたメイドに話している。
今日も神姫センターに行く予定だったんだけどなぁ…
「そうよ、悟くん~そのままついでに泊まってっちゃってもいいから~」
美音ちゃんはお母さんの提案にニコニコしながら、僕にぎゅっと抱きついてくる。
美音ちゃんのお父さんはさらに落ち着かない様子だ。
「せっかくだからご飯も食べていこうよ、さとる~」
「お姉様、頬にクリームがついてますよ」
ルセルの前にはケーキの皿と思われるお皿が山ほどある。
今の一瞬でそんなに食べてしまったのだろうか。
シュクレの方は顔にクリームがついてる姉を、綺麗にするために笑顔で拭いてあげている。
「確かにルセルやシュクレもここにいるのが楽しいみたいですし…ご迷惑でなければ…」
僕の言葉がなくても美音ちゃんのお母さんやメイドさん達は、慌ただしく夕食の準備を始めていた。
「悟くんが泊まるのは構わないが、悟くんには客室に泊まってもらうぞ」
美音ちゃんのお父さんがそう言うと、美音ちゃんの方はケチーなんて文句を言っている。
お父さんもお母さんもちゃんといるっていいなと羨ましく思う僕だったが、そんな僕に気付いたのかルセルとシュクレは僕に向かって一口サイズに切ったケーキを差し出してきた。
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