「はぁ…お姉さま、大丈夫ですか…?」
シュクレは苦しそうに肩で息をしている。
これがリミッター解除の反動なのか…
そう思うと、あまり使いたくない。
「大丈夫だよ、それにしても、あの敵…」
あのフェローネとか言う神姫はかなり強かった。
ルセルとシュクレももう少しでAクラスなのでそこそこ強いはずなのに、リミッター解除しても引き分けだなんて…
それに、相手はほとんど装備していなかった。
なんらかの戦略なのか、余裕の表れなのか…
「…やっぱりお前強いんだな、水都と月夜がほとんど手も足もでなかったのに…」
星夜くんがビックリしたような顔をしている。
「当然だよ、ミニーソンくんは最近で本当に強くなったよね」
「本当よ、私とアウラなんかじゃもうとても敵わないわ」
ちまりちゃんと姫子さんが感心している。
…なんだか恥ずかしくなってきた。
「…次は勝ちたいですね、マスター」
深呼吸をして少し落ち着いたシュクレが、少し悔しそうな顔で話しかけてくる。
大好きなお姉さまの敵を討てなかったのが悔しかったんだろうな。
「…よし、悟、これから俺と勝負だ!」
「あれー、星夜くんがいまさら頑張っても、悟くんが勝てなかった相手には勝てないんじゃないの?」
「う、うるさいな…」
美音ちゃんはなぜか自慢げに星夜くんを一蹴している。
「と、とにかく俺と勝負だ! 行くぞ!」
星夜くんがバトルロンドの機械に向かっていく。
「…シュクレ、連続でも大丈夫?」
「はい、もう大丈夫です」
「シュクレの分までぼくが頑張るよ!」
2人の声を聞いて、僕も機械へと歩き出した。
「…ふーん、お父さんが強いって言ってたけど、あれくらいじゃまだまだだね」
ピンクの髪をした少年が、バトル中のミニーソンたちを見ている。
「今回の戦闘で大体データは取れたわ、この辺の神姫のレベルも大したこと無いようね」
黒いツインテールの神姫がピンク髪の少年に話しかけている。
その脇には、灰色の髪の神姫が2体寄り添っている。
「…よし、そろそろ行動を起こそうか…」
ピンク髪の少年は怪しげな笑顔を浮かべると、神姫センターの外に向かって歩き始めた。
バトルの順番待ちをしていると、突然神姫センターの電気が消えた。
「な、なにこれー?」
「はい、びっくりです」
美音ちゃんのゆきうちゃんと雪卯さんが真っ先に反応した。
そんな事をしていると、すぐに電気は復旧した。
「な、なんだったんだ…?」
「…ただの停電だろうか」
びっくりする星夜くんに、月夜さんが反応する。
神姫センターで停電とは珍しい。
≪ヴィーン ヴィーン≫
突然警報音が鳴り響くと、バトルロンドのディスプレイにエラーメッセージが表示される。
バトルロンド中だった神姫たちは一度動きを止めたかと思うと、突然マップに攻撃をし始めた。
「な、なによあれ!?」
「なんかこわいー」
びっくりする姫子さんとアウラさん。
…バトルロンドのシステムに何か異常が起きたのだろうか…?
≪プルルルル≫
僕の携帯電話がなっている。
珍しいな、僕が連絡するような相手はみんな一緒なのに…
「標準の着メロ使ってるなんて珍しいねー、試しのアタシの歌ってる声を着メロにしてみない?」
「か、勘弁してください…」
美音ちゃんに冷やかされながら携帯電話を開くと、見慣れない電話番号が表示されている。
…誰かはわからないけど、ここは電話に出てみたほうがいいような気がした。
「悟、今は神姫センターか?」
電話の相手はお父さんだった。
携帯電話に電話してくるのなんて、携帯電話を持ってから初めての経験だ。
「今ニュースでもやってるんだが…どうやら、バトルロンドのシステムが乗っ取られたらしい」
「え…?」
お父さんの一言に衝撃が走る。
「現在バトルロンドに参加中だった神姫は全て暴走して、バトルロンドのシステムに攻撃を加えているらしい。
ルセルやシュクレが今参加中じゃなければいいのだが…」
「…」
「どうしたの、さとる?」
電話を聞いて呆然としていた僕に、ルセルが声をかけてくる。
「なんでも、バトルロンドのシステムが誰かにハッキングされて、参加してる神姫が暴走してるらしいんだ…」
「ええ!?」
シュクレもびっくりしている。
「悟!聞いているのか?」
「ご、ごめんなさい、びっくりしてて…」
思わずお父さんの話を無視していたらしい。
もう一度携帯電話を耳に当てる。
「今バトルロンドに参加中の神姫は、自らシステムに攻撃を加え、システムの停止と共にデータが消滅するらしい」
「それって、死ぬって事…?」
「そうだ」
今参加している神姫たちが死ぬ…!?
「だから、お前もすぐに家に帰って…」
そこまで言うと、突然通話が切断された。
「お父さん!?切れちゃったのか…」
画面を見ると、バッテリー切れと表示されている。
あまり使わないからと充電するのを忘れていた。
「マスター、神姫が死ぬって本当ですか…?」
会話を聞いていたらしいシュクレが、驚いたような顔で聞いてきた。
「…うん、あのままシステムを攻撃し続けたら危ないって…」
「そ、それじゃあ助けなくちゃ!」
ルセルがバトルロンドの機械へと走り出そうとする。
「…神姫が死ぬと聞いちゃ、ほってはおけないな」
「ミニーソンくん、どうしたらいい?」
星夜くんとちまりちゃんもやる気満々のようだ。
「…参加中の神姫を機能停止にできれば、システムの破壊を防げるかも…」
「よーし、ゆきう、雪卯、やっちゃうよー」
美音ちゃんは早速ゆきうさんと雪卯さんを機械にセットしようとしている。
「で、でも、僕たちの神姫も危ないかも…!」
「ぼくたちの力でみんなを助けられるなら、やるしかないよ!」
「ルセル…」
ルセルの真面目な顔を見て、僕も決心を決めた。
「ルセル、シュクレ、一緒に戦おう?」
「はい、マスターとお姉さまとならどこまでも」
「うん、みんなを助けようよ!」
シュクレとルセルの声を聞くと、二人を機械にセットした。
COMMENT