校舎にたどり着くと、下駄箱のところをお掃除ロボットが動き回っていた。
「お掃除ロボットさんはいつも通りなのかな?」
後ろに隠れているちまりちゃんが心配そうに覗き込む。
「ネットワークが乗っとられてるなら、何かあってもおかしくはないわね…」
姫子さんの言うことはもっともだ。
お掃除ロボットも暴走している可能性も…
「…こうなったら、アタシが見てくるよ」
そういうと美音ちゃんはスタスタと歩き出した。
「み、美音ちゃん!?」
「いざとなったらカマキリ拳法で倒してやるから、任せといてねー♪」
止める暇もなく下駄箱にたどり着くと、お掃除ロボットの隣を通り過ぎようとする。
≪キイィィン≫
お掃除ロボットは突然美音ちゃんのほうに襲い掛かる。
「…キシャァァッ」
美音ちゃんは腕を鎌のように構えると、お掃除ロボットに飛び掛かる。
何発か攻撃を加えると、お掃除ロボットは煙を出して動かなくなった。
「もう大丈夫よー♪」
美音ちゃんが手を振っている。
前にも一度見たけれど、戦ってるときの美音ちゃんは、僕より男らしい気がする…
「…美音ちゃん、すごいね…」
「…うん」
僕とちまりちゃんも、校舎に向かって走り出した。
校舎に入ると、中には静寂が広がっていた。
人は誰一人としていないようだ。
「敵さんはどちらにいらっしゃるのでしょうか…?」
「出番だよ、さとる!」
ルセルに急かされて、端末を起動し、学校のネットワークに無線で接続する。
ネットワークは完全に掌握されており、アクセスできるところは少ない。
「ミニーソンくん、なんとかなりそう…?」
ちまりちゃんが心配そうに覗き込んでくる。
学校内は防火シャッターなどで封じられていて、行けるところは少なそうだ。
ネットワークに侵入する隙がありそうなのは、1階にある職員室くらいだろうか…
「職員室に行ってみよう」
「職員室ならすぐそこね、ならアタシは入口で見張っててあげる」
美音ちゃんが職員室のドアを開けてくれる。
「美音ちゃんだけにそんな危ないことさせられないよー」
「いいのいいの、アタシの実力を信じなさい♪」
美音ちゃんに急かされて、僕とちまりちゃんは職員室に押し込まれる。
「…大丈夫かな、美音ちゃん」
「さっきの様子だったら大丈夫な気はするわね」
姫子さんにそう言われるとそんな気もしてくる…
「マスター、私たちは私たちにできることをしましょう!」
「今度こそは僕たちが様子を見てくるよ」
たしかにまずは神姫たちに様子を見てもらうしかなさそうだ。
ちまりちゃんと共に神姫を端末にセットする。
「それじゃあ行ってくるよー」
「任せときなさい」
アウラさんと姫子さんが先にネットワークに入るのを見てから、ルセルとシュクレも続いて侵入していった。
「なんだろここ…お城?」
アウラさんが空をクルクルと飛び回りながら見回している。
そこにはヨーロッパ風のお城が建っていた。
「なんだか不気味なところね…」
アウラさんと一緒に辺りを探っていた姫子さんが一度地面に降りてくる。
「…待ってください、周りに動く影がたくさんいます!」
シュクレの叫びにみんなが反応する。
すると、ルセルの後ろから黒い犬のような体型のものが飛び掛かる。
「な、なんなのこれ!?」
ルセルだけでなく、シュクレやアウラさん、姫子さんにも襲い掛かる。
「これ、倒せないよー!?」
アウラさんのランチャーを食らっても、敵は吹き飛ぶだけで再び起き上がる。
なんだこれは…神姫には見えないし…
「…ネムのモンスターは不死身なの」
お城のドアが開くと、黒いドレスを着て、灰色の髪をした背の低い神姫が現れた。
「いらっしゃい、でも、あなたたちはここで死ぬことになるの…」
「うるさいわね、ごちゃごちゃめんどくさいのよ!」
≪ドシュッ≫
姫子さんがライフルを撃つが、黒いモンスターが身を盾にして守る。
「…これがあんたのプチマシィーンってことかしら?趣味が悪いわね」
「プチマシィーンじゃないの…これはネムの下僕なの」
「どっちでもいいわよっ」
姫子さんがネムと名乗った神姫に集中して狙撃する。
しかし、黒いモンスターに阻まれ、攻撃を加えることができない。
「たすけるよー」
≪バシュゥゥン≫
アウラさんがランチャーを放つも、モンスターの防御は固い。
「こ、こっち来ないでよー!?」
「数が多過ぎます…!」
ルセルとシュクレは黒いモンスターに取り囲まれていた。
空を飛べないので、逃れることができない。
まずいな…こんなところで足止めされるなんて…
「…ちまり、ルセルちゃんとシュクレちゃんは脱出させたほうがいいわ、飛べないのは不利すぎるもの」
「うん、後はアウラたちでどうにかするよー」
…2人の言っていることはもっともだ。
でも…
「ちまりっ、この2人をこんなところでやらせるわけにはいかないのよっ」
「…うん、ミニーソン、後は任せて?」
たしかにそうかもしれないけど、ちまりちゃん1人に戦わせるなんて…
「…だぁーっ、いちいちめんどくさいっ」
切り札として戦闘には参加していなかったラパンが、勝手にルセルとシュクレをネットワークから脱出させる。
「…って、あれ!?」
突然戻されたルセルはパニックにでもなったのか端末から落ちそうになっている。
「姫子さん…アウラさん…」
「2人は休んで待っててー」
シュクレも心配そうに端末の画面を見つめている。
「…か、かってにやってよかったのかな…?」
「俺達のマスターが無駄にやられるよりはいいだろ」
戸惑っているトルテュに、もう開き直ったらしいラパン。
…今回は助かったかな?
「ミニーソン、姫子ちゃんとアウラちゃんを信じてあげて?」
ちまりちゃんの言葉にうなづくと、端末の画面に目を移した。
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