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なすへちま農園ブログ


武装神姫とかFAガールとかメガミデバイスとかドールとか
目次 | キャラクター紹介 | 用語集

その場には、呆然とする僕と2つのアタッシュケースと、微妙な空気が残された。



「…これで俺と勝負できない理由はなくなったな?」

…すっかり忘れていた。星夜くんに戦いを挑まれていたんだった。

「でも、僕神姫なんてやったこともないし…」

「大丈夫、ちまりが説明してあげるからー!」

ちまりちゃんは何が嬉しいのかニコニコしている。

「まずは二人を起動してあげないとね、向こうに無料のクレイドルがあるよ」

ちまりちゃんが神姫センターの片隅にひっぱっていく。

「アタッシュケース開けて、ミニーソン」

…ちまりちゃんにそう言われたら嫌だとは言えないじゃないか…
僕はアタッシュケースの横のボタンを押して、アタッシュケースを開いた。



「これが素体にCSCに…わぁ、装備がいっぱいある…」

初めて見るものばかりの光景に頭がクラクラする。

「…やっぱり僕には無理だよ…」

「だいじょうぶ、だいじょうぶー」

アウラさんが僕の肩を叩いている。
…まさか神姫に励まされるときがあるなんて…

「まずは素体にCSCをセットしてクレイドルに乗せれば起動するよー」

ちまりちゃんが神姫の胸を開いて宝石のようなものをセットし、クレイドルと呼ばれているものに乗せた。
何が始まるのか分からない僕は、ただただ慌てふためいていた。



「「S.Project製、MMS-Automaton 神姫
  白魔型スノーフレーク
  セットアップ完了、起動します…」」

2つの声が重なり、2体の神姫の瞳が同時に開く。
その4つの瞳が僕を見つめていた。

「…えっと…はじめまして、僕が君達のマスターの堂元悟です」

よく分からないので、思わず真面目に挨拶してしまう。
神姫相手に僕は何をやっているんだ…

「さと…る…?」

赤い目が片方髪に隠れてしまっている子が、僕の名前を呼ぶ。

「貴方が私のマスター…?」

緑の目にピンクのメッシュが入った子は、まだ状況をわかっていないかのようだ。
この子の方が背が高く、大人らしい顔をしている。

…同時に起動したんだから、この子達は双子って事になるんだろうか…
人間でもない相手に、僕は不思議な気持ちを覚えた。



「…準備できたみたいだな」

そのとき、星夜くんが後ろから割り込んできた。
待たされたせいか、かなり不機嫌そうだ。

「ご、ご、ごめんなさい!」

思わず謝る。

「さぁ、早速バトルだ!」

「ちょっと、まだ名前も付けてないのよ!?」

星夜くんの突拍子もない言葉に、姫子さんがすぐさまツッコミを入れる。

「バトルをする分にはもう問題ないだろ?さぁ早く早く!」

「な、何するんだ!」

星夜くんは双子を手で持つと、巨大なディスプレイの前に持っていくと、機械に二人をセットした。



機械にセットされると、双子は気を失ったかのように動かなくなった。
次の瞬間ディスプレイの中に双子が現れた。

「痛てて…一体なんなんだよー!」

「だ、大丈夫ですか、お姉さま!?」

大きい子の方が、小さい子の方に走っていく。
…お姉さま?

「…お姉さまってどういうこと…?」

「私より起動が少し早かったので、この人は私のお姉さまです!」

そういうことか…
大きい方が妹で、小さい方が姉。
見た目と立場が逆なせいで、頭がちょっとパニックになりかけた。

「ほら、さっさと装備もセットしろよ!」

星夜くんがディスプレイの反対側から叫んでいる。
そんな事を言われたって、僕にはさっぱり分からない。

「じゃあケースの中の装備を…」

「無理よ、今からじゃ装備を考える時間がないわよ」

ちまりちゃんがケースの中の装備を出そうとするが、姫子さんの言葉で動きを止めた。

「アウラたちの装備を貸してあげようよー」

「そうね、それしかなさそうね」

2人は自分の装備を外し、双子にセットする。
ディスプレイの中の双子にも白い翼が装備される。

「私たち、名前もまだないのですけど…」

「ごめんね…」

名前すら考える暇のない状況に、段々申し訳なくなってくる。

「…あーもう、とにかくこのバトルを終わらせればいいんだね!?」

小さい方の子が苛立ち始めている。
…当然だよね…本当にごめんなさい…

「バトル開始まであと20秒しかないよー」

ちまりちゃんの言葉に衝撃を受ける。
…ぼ、僕はどうすればいいんだ…?

「…こんなことになってごめんね。戦って欲しいんだ、お願い」

僕には謝ることしかできない。

「…しょうがない…バトルが終わったらいい名前を付けてよね!」

「はい、できるだけ頑張ってきますから」

小さい子はこっちを睨みつけ、大きい子は微笑みかけてくれる。
…姉妹のはずなのに似てないなぁ…
少しだけ、心が安らいだ。



――BattleRondo Ready...Go!

ディスプレイに戦闘開始を告げるメッセージが表示される。
双子は2人とも背中に白い翼を装備しており、小さい子は短いナイフ、大きい子は長いライフルを装備している。

「敵はどこから来るかわからないわよ、まずは空から様子を見るべきね」

姫子さんの言葉を聞き、それを2人に伝える。

「二人とも、まずは空を飛んで…」

「てやぁぁぁぁあっ!」

小さい子が全速力で敵のいると思われる方向に飛んでいく。
…って、ちょっと待ってよ!

「お姉さま、突撃するにはまだ早いです!」

大きい方が叫ぶが、小さい方には伝わっていない。


「お前が相手か…?」

小さい方が飛んでいった先には、海賊のような格好をした神姫が待ち構えていた。
小さい方の子がナイフを敵に向ける。

「えぇーい!」

「…それではダメだな」

海賊のような神姫がその攻撃をあっさりと避ける。
避けた勢いのまま、左の腰に刺さっている剣を右手で抜いた。

「この、負けるかぁー!」

小さい子が再び突撃をかける。

「水都、手加減はいらないからな?」

「…分かっている!」

星夜くんの声に反応して、海賊のような子が剣を振りぬく。

≪ズシャッ≫

小さい方の子の翼が一瞬にしてバラバラになった。

「え、えぇ…!?」

「…そんなでは誰にも勝てないぞ?」

小さい方の子が慌てていると、海賊のような子がすぐに走ってきて剣を首の横に当てて動きを止めた。

「…くそ、どうしてぼくが…!」

小さい方の子は一度後ろにジャンプすると、もう一度突撃をかけた。

「素直に負けを認めろ!」

海賊のような子が再び剣を振ると、小さい方の子はそのままの勢いで倒れた。



「お姉さま!?お姉さまー!!??」

大きい方の子はうまく飛ぶことができずに、2人の戦いに追いつけずにいた。
小さい方の子が倒れたショックにバランスを崩して落下する。

「…お姉さま…」

大きい方の子はそのまま歩いて2人の元に行こうとする。
すると、大きい方の子の横から、黒い影が飛び出した。

「見つけたーっ!」

黒い影は腕に付いた大きな爪を振りかざす。

≪ズシュッ≫

「キャッ!?」

大きい方の子はびっくりしてライフルを盾にする。
ライフルは一瞬にして爪に引きちぎられた。

「月夜、次は翼だ!」

星夜くんの指示を聞いた黒い影は、大きい方の子の後ろに一瞬にして回り込む。
そのままの勢いで翼を爪で切り刻んだ。

「ま、マスター!?」

「もっといいマスターのところに行けたらよかったな!」

黒い影は再び前に回りこむと、爪を振り下ろす。


――You Lose...

画面のメッセージは、僕たちの敗北を告げていた。
僕はただただ、呆然とするばかりだった…

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ちの
神姫&ドールのアイペや布服の製作だけでなく、髪パーツの自作までするマルチな淑女。
2012/9/30に亡くなりました。記事にまとめてあります。


ちっぽ
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Threads:@nas_hechima
神姫の武装パーツや髪パーツの制作や、ブログの更新もする雄犬。
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