「いっくよーっ!」
ルセルがスラスターを噴かして飛び出していく。
シュクレはビルの横に身を隠し、敵の位置を探っている。
今回のマップは都心の街中のようなマップらしい。
「マスター、お姉さまの位置をできるだけ詳しくお願いします。援護をしなければならないので」
「うん、わかったよ」
レーダーを見ると、ルセルはだいぶ前のほうまで進んでいる。
敵とはまだ遭遇していないようだ。
「さとる、敵が見つからないよー!」
ルセルからも声が聞こえる。
ルセルの方に目を向けると、ちょうど翼を広げた神姫が画面に映った。リーシャさんだ。
「見つけたのですよー!」
リーシャは上空から弓を構えると、光の矢を放つ。
ルセルはスラスターの向きを変えて回避した。
「上か!」
ルセルは上を睨むと、スラスターの向きを上に変える。
スケートでビルを駆け上がって攻撃するつもりらしい。
≪ガッシャーン≫
「…痛っ!?」
無理な方向転換に、ルセルは転倒してビルに突っ込む。
まだスケートの扱いに慣れていないようだ。
「シュクレ、ルセルが空から攻撃されてるから、援護してあげて!」
「はい、今敵を見つけました!」
シュクレはライフルを構えると、上空に向かって発射する。
≪バンッ バンッ≫
しかし、踊るようにクルクルと飛び回るリーシャさんには命中しない。
「見つけたっすよー!」
希歌さんもルセルたちのところに追いついたようだ。
希歌さんが剣を構えたのに合わせて、ルセルはロッドにトンファーを装備して斧モードに組み替える。
「経験の差を見せてやるっすよー!」
「ぼくだって、負けないんだからー!」
≪キンッ≫
剣と斧がぶつかり合う。
希歌さんの鋭い剣捌きに、斧で対応するルセルさん。
近距離が得意というのは間違いないらしい。
「リーシャもいるのですよー!」
リーシャさんも弓を分解して短剣にして襲い掛かる。
希歌は右肩の盾で防ぐが、一対二はかなり苦しそうだ。
「…シュクレ、名前は忘れたけどランチャー!」
「はい、ジュレールティーアですね!」
シュクレは姿勢を低くしランチャーの発射体制に入る。
光が砲口に集まったかと思うと、光の塊が放たれる
≪ドゥーン≫
「わわ、危ないのですよ!」
狙われていたリーシャがギリギリのところで回避する。
シュクレさんは続いてライフルを構え、リーシャに向かって発射する。
≪バンッ≫
ライフルがリーシャの翼に命中する。
リーシャがふらふらと地面に落下する。
「お姉さま、リーシャさんは私が相手しますので、お姉さまは一人に集中してください」
「わかったよ!」
シュクレさんがリーシャさんの着地地点に向かって走り始めた。
ルセルと希歌さんの戦いは膠着していた。
2人とも近距離戦が得意なため、ダメージを与えられずにいる。
「この、いい加減諦めるっすよ!」
希歌が剣を振り回すが、ルセルのKS製の装甲を貫けずにいる。
「えぇーい!」
ルセルが斧を振り落とすが、攻撃は命中しない。
やはり経験の差が影響しているらしい。
「ルセル、斧じゃなくてトンファーを使うんだ、斧じゃ当たらないよ!」
「え?でもトンファーなんかじゃ…」
ルセルは不思議そうな顔をしている。
「相手の胸元に飛び込んでトンファーで攻撃すれば、いくらなんでも避けられないはずだよ」
ここまでの戦いを見て、思いついた作戦がこれだ。
当たらない攻撃よりは、当たる攻撃のほうが有効なはずだ。
「…わかった、さとるを信じるね!」
ルセルは斧を分離してトンファーに持ち変える。
…信じるなんてちゃんと言われたのは初めてかもしれない。
なんだか、胸の奥がむず痒い。
「こんのぉぉぉおっ!」
スラスターの向きを小刻みに変えながら、希歌さんに接近する。
「そうはさせないっすよー! って…あれ?」
斬りかかってきた希歌さんの剣を、ルセルが右肩の盾で弾き飛ばす。
希歌さんの無防備な胴体に、ルセルがトンファーで一撃を加える。
≪ドンッ≫
痛いっすよぉー!」
希歌さんがビルに吹き飛んでいく。
それを追うようにルセルさんも飛び込んでいく。
「一発じゃ…終わらないからね!」
≪ダンッ≫
追いながらもう一撃を加える。
この一撃で、希歌さんのLPは0になり、機能を停止した。
「やったぁー!」
ルセルは右腕を天に向けて突き上げ、喜びを表していた。
「…逃がしません!」
飛んで逃げようとするリーシャさんに対して、シュクレさんはライフルで攻撃しながら追う。
飛び初めを毎回攻撃され、リーシャさんは飛び上がることができない。
「飛べないのはすごく怖いのですっ!」
観念したのか、リーシャは短剣でシュクレさんに襲い掛かる。
シュクレさんは近くに寄られるのは苦手なはずだ。
「シュクレ、ソードモードでいける?」
「はい、大丈夫です!」
シュクレはライフルをソードモードに持ち変える。
斬りかかってきたリーシャさんに対して剣で逆に斬り返す。
≪ズシャァッ≫
命中したのはシュクレの剣だった。
長さで勝っていたのがよかったらしい。
「こ、これはまずいのですよ!」
リーシャさんは後ろに吹き飛んでいく。
シュクレさんは再びライフルに持ちかえると、そのまま発射する。
リーシャさんは避けることもできずに吹き飛んでいく。
「とどめです、ジュレール…ティーアっ!」
≪チュドーン≫
ランチャーの光がリーシャさんを貫いた。
――You Win!
勝利を告げるメッセージが、画面に表示されていた。
COMMENT
ミニーソンはこの時点ではまだまだ神姫に頼り切っている感があるので、今後の成長に期待です。