お父さんの研究所へと駆け付けると、レイニーさんが待ち構えていた。
珍しく焦った表情をしている。
「お帰りなさいませ、話しは聞いています」
レイニーさんに案内されと、奥へとついていく。
「…お前って凄いところに住んでるんだな…メイドなんているし…」
星夜くんは珍しそうな顔であたりを見回している。
「だからって、負けるつもりはないからな!」
びしっと指をつきだしながら宣言する。
…今は僕たちが戦うところじゃないのだけど…
「…話しをしても宜しいでしょうか、悟さま?」
「う、うん…」
そういうと、レイニーさんは話し始めた。
「今、バトルロンドのシステムは何者かによってジャックされています。
お兄様の調査によると、敵はバトルロンドのシステムから他のシステムへと攻撃をかけるつもりのようです」
「攻撃ってなーに?」
アウラさんの質問にレイニーさんが答える。
「敵は国の極秘事項のデータベースから信号のシステム、果てには小学校に保存されている修学旅行の写真にまで、アタックを続けているようです。
このままだとこの辺りのあらゆるシステムが乗っ取られる可能性があります」
「…そんなことをやらせるわけにはいかないな」
「ああ、その通りだな」
水都さんや月夜さんは気合いを入れている。
「お兄様の調べによると、攻撃は皆さんが通っている学校からのようです。現在は学校のセキュリティシステムが乗っ取られていて、学校に入ることすら難しい状態です」
「…警察はなにもしてくれないの?」
美音ちゃんの質問に、レイニーさんは残念そうに肩を落とす。
「警察は交通システムが停止したことや各所の防犯システムの暴走への対策で精一杯です。
そんな訳で、様々な研究者に対策の依頼が入っています。お兄様もその中の一人です」
そう言いながら、レイニーさんは何か小型の端末のようなものを取り出した。
「そこで皆さんにお願いしたいのですが、学校に行って頂けませんでしょうか?
この端末は本来テスト用なのですが、神姫をネットワークに送り込むことができます」
「ぼくたちが行ったところでなんとかなるの?」
ルセルの疑問に、レイニーさんは深く頷く。
「敵はネットワークを護るために神姫を数体配置しているようです。
それらを撃破していけば、敵の本体に辿り着けるはずです。端末は一人一つずつあります」
レイニーさんは一度目を閉じ深呼吸をすると、僕たちを見つめて話し始める。
「皆さんの実力を信じてのお願いです、行って頂けますか?」
「もちろんだ、そんなふざけた奴は許してはおけない!」
星夜くんの叫びに、ちまりちゃんと美音ちゃんも深く頷く。
「さとる…ぼくたちも力になれるかな?」
「神姫の皆さんを見捨てることなんてできません…!」
ルセルとシュクレも気合いが入ったようだ。
その瞳は力強さに溢れている。
「よし、行くぞ悟!」
既に走り出した星夜くん。
…ちまりちゃんには酷かったけど、決して悪い人では無いんだろうな…
「ミニーソンくん、行こう?」
「…ちょっと待ってて、ちまりちゃん」
ちまりちゃんを呼び止めると、僕は自分の部屋へと走り出す。
「どうしたの、さとる?」
「…あれがもしかしたら役に立つかもしれない」
「…あれってなんですか、マスター」
不思議そうなルセルとシュクレを見つめる。
「…最後の最後のための奥の手だよ」
そう答えると、僕はパソコンからメモリーカードを取り出すと、端末に差し込んだ。
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