…考えがまとまらない。
僕は、パソコンの前で頭を抱えていた。
画面に表示されているのは、白魔型の仕様書。
白魔型最大の特徴、リミッター解除。
ルセルだけが星夜くんとの戦いで発動したが、ログを見るかぎり、どうやら出力が上がったことによって重装性能が跳ね上がっているらしい。
だから二人分の装備をしても、機動力に影響がなかったのか…
だが、リミッター解除は神姫に大きな副作用をもたらす。
人間で言えば、強い頭痛状態になるらしい。
僕は、それを軽減する方法を探すために仕様書とにらめっこしていた。
シュクレだって、いつか発動するときがあるかもしれない。
二人には、そんな思いはしてほしくなかった。
しかし、仕様書のどこを探しても改善方法なんてものは発見されなかった。
こうなったら自分でやるしかないか…
僕はプログラムを打つためのソフトを起動した。
…作業を初めてから3時間。
リミッター解除のプログラムの改良を試みるものの、その複雑さとブラックボックスの多さに僕は困り果てていた。
神姫の心は、まるで人間かのようだ。
それを力に変えるリミッター解除なのだから、当然と言えば当然なのだが…
ルセルとシュクレは双子の神姫だ。
見た目はまるで違うが、根幹は一緒なはず。
それを生かして、リミッター解除まで行かなくても同等の力を発揮できないものだろうか…
…パソコンの中に完成したプログラムは、計画とはまるで違うものだった。
二人のリミッター解除を同期、分散するつもりが、むしろ二人の意識をシンクロさせる結果になっている。
いくら根幹は一緒とは言え、ここまでやると、場合によっては二人の意識が混ざり合って戻れない可能性がある。
…ただ、おそらくちゃんと動いたなら、その出力は通常のリミッター解除どころではない。
二人の意識は完全に一致し、連携というよりは一つの存在として戦うことができる。
チームワークどころの話ではない。
…だけど、二人が混ざり合って消えてしまうなんて、嫌だ。
僕はプログラムをとりあえず保存すると、パソコンをシャットダウンする。
ルセル、シュクレ。
こうなったら、僕が最高の指示を出せるようにして、リミッター解除なんてする必要がないくらい強くなるしかないかな。
クレイドルで眠っている二人に心の中で話し掛けると、部屋の電気を消す。
僕はベッドで横になると、二人と同じように目をつぶった。
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