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なすへちま農園ブログ


武装神姫とかFAガールとかメガミデバイスとかドールとか
目次 | キャラクター紹介 | 用語

「新素材は使えそうか?」

薄暗い研究室では、銀髪の男と研究員のような男が話していた。

「この軽さでこの強度…神姫に使うには申し分ありません」

銀髪の問いに研究員が答えた。

「そうか予測通りだな。設計図のほうは?」

「奪って来た神姫の装備のデータですが、市販の神姫に比べると破格の高性能です。調整前だったのでしょう」

「賭けで使うにはちょうどいいな」

銀髪の男は表情も変えずに答えた。

「…後はあの強情なお姫様の調教だけだな」

「人格プログラムの書き換えにはもうしばらくかかります」

男の振り返った先には、赤い髪を神姫が眠っていた。

「…お前には存分に役に立ってもらうぞ、お姫様」

 

 

「…へちまガーデン?」

中学の帰り道、抹黄の口から初めて聞く言葉が飛び出した。
ガーデンってなんだ? 食べ物か?

「お兄ちゃんは相変わらず馬鹿だねー、神姫のお洋服とかを売ってるお店だよ」

「ふーん…」

神姫に服を着せる人がいるということは、俺も聞いたことがあった。
抹黄のリーシャも、たしかにかわいらしい服を着ている。

「リプカちゃんがずーっと素体のままなのはかわいそうだよ、せめてお洋服を買ってあげようよー」

「いや、私は…」

リプカは少し戸惑っているようだ。
まぁたしかに、リプカはそういうタイプではないかも…

「リーシャもオススメなのです、気分が全然違うのです」

「ほらほら、ぐずぐず言ってないでいくよ、お兄ちゃん!」

抹黄って、一度言い出すと聞かないんだよな…

「わかったよ、俺も行くぜ」

「それでこそお兄ちゃんだよ!」

抹黄はすぐに走りだすと、俺を手招きしている。
知らないうちに誘導されていたのか…

「ほらほら、入った入った!」

「あーもう、わかったから押すなー!」

抹黄に押されて店内に入ると、そこにはファンシーな空間が広がっていた。
広くは無いが、いたるところに神姫の服が置かれている。

「いらっしゃいませー」

商品の整理をしていたお姉さんと目が合う。
茶髪のツインテールの…あれ、この人どこかで…

「…あの人、あのときの…」

リプカもなにか思い出したようだ。

「…赤哉くんだよね? 私はちまりだよ、覚えてる?」

…思い出した!
悟さんを助けに行ったときにいた、ちまりさんだ!

「知り合いだったんだ、まさかお兄ちゃんに女性の知り合いがいたなんて…」

「う、うるさいな、いたっていいだろ!」

茶化す抹黄に思わず叫んでしまう。
たしかに俺には、女友達なんて皆無だ。

「へちまガーデンにようこそ! もしかして、抹黄ちゃんのお兄ちゃんって赤哉くんだったのかな?」

「はい、これが私の神姫馬鹿お兄ちゃんです」

抹黄が好き勝手言っている。

「そっか、ってことはこの子がリプカさんだね」

「…あぁ、私がリプカだ」

ちまりさんがリプカを手の上に乗せると、じろじろと眺めている。

「この子なら、メイド服なんかが似合うかなぁ…」

「な…め、メイドだと!?」

ちまりさんの発言に取り乱すリプカ。

「うん、是非試着だけでもしてみてよ」

「こ、断る!」

全力で嫌がるリプカ。
…リプカらしいと言えば、リプカらしいよな。

「なら、神姫バトルでちまりが買ったら、着てもらおうかなー」

「ま、マスター、私は絶対に嫌だぞ!」

うーん…リプカは嫌がってるけど、バトルの経験は積みたいよな…

「ちまりさん、勝負だ!」

「ま、マスター!?」

リプカがびっくりした顔でこちらを見てくる。

「男の子ならそうじゃなくっちゃね。サナリア、こっちきてー」

「はーい!」

どこからか声が聞こえたかと思うと、黄緑の髪をした神姫が奥から走ってくる。
あれは…バトルロイヤルで一緒に戦った、サナリアさんだ!

「姫子とアウラは何してる?」

「勝手にキャッキャウフフしてたから置いてきたよ」

ちまりさんの口から知らない名前が…ちまりさんの神姫たちだろうか?

「よーし、それじゃ神姫センターまでいこうか」

「えっと、店番は大丈夫?」

「…そうだった」

サナリアさんのツッコミに固まるちまりさん。

「あ、それなら私やってます!」

抹黄が手を挙げる。

「…お願いできるかな? いざとなったら姫子たちに聞けばだいたいわかるから…」

「はい、任せてください!」

抹黄も店番ができるのが嬉しいのか、生き生きとしている。

「…それじゃあ、いこっか?」

「…はい!」

ちまりさんに続いて、へちまガーデンを出る。
…助かった、正直恥ずかしくてしょうがなかったぜ…

 

――BattleRondo Ready...Go!

神姫センターに着いた俺達は、早速戦闘を開始する。

「…この戦い、絶対に負けられん!」

リプカもかなり気合が入っている。
メイド服が相当恥ずかしいらしい。

「見っけーっ!」

一瞬のうちにサナリアさんが接近していた。
…この子、凄まじく速い…!

「かみなり、パーン…」

「はぁっ!」

《ガッシャーン》

殴り掛かろうとしてきたサナリアさんを、リプカが先に蹴り飛ばす。

「あいつは完全な近距離タイプと見た。接近させるのは危険だぞ、マスター!」

「わかった!」

吹き飛ばされたサナリアさんが、くるんとジャンプしながら立ち上がる。
ダメージはどうやらないらしい。

「今のは油断したけど、次はこっちの番だよ!」

サナリアさんの手足から、電気がバチバチと流れる。
サナリアさんはまた一気にリプカに接近すると、先ほど以上のスピードで蹴りを入れる。

「甘いぞ!」

ギリギリで避けるリプカ。

「まだまだぁー!」

パンチとキックのコンビネーションがリプカを襲う。
…まずい、あんな距離じゃ槍なんて使えない…!

「くぅ…!」

「一気に行くよ!」

サナリアさんの背中のパーツが、左右2本のアームに変化する。
両手両足にアーム…こんなに手数が多いんじゃ…!

「マスター、何か手はないのか!?」

「えーと…」

リプカの武器は槍だけで、今まではそれだけで大丈夫だった。
でも、ここまでの近距離タイプ相手じゃ…!

「よいしょー!」

サナリアさんが気合を入れると、両手両足だけでなく前進から電気が流れる。

「くっ…この!」

リプカが槍を繰り出すが、避けられた上に槍を掴まれる。

「ぐわっ!?」

「ビリビリするでしょ!」

槍を伝ってリプカに電流が流れる。
まずい…これじゃ手が出せない…!

「リプカ、ここはリタイアを…」

「ふざけるな、騎士は死ぬまで諦めない!」

すぐに武器構え直すリプカ。

「とどめだよ!」

サナリアさんがまた一気に距離詰めると、低い姿勢でリプカの下に飛び込む。

「かみなりアッパー!」

サナリアさんの一撃で、リプカが上に吹き飛ぶ。
サナリアさんもリプカを追って飛び上がる。

「このっ!」

リプカの苦し紛れのキックも軽々と避けられる。

「ボルテック…アーツッ」

サナリアさんのパンチがキックがアームが、ガードすら間に合わないスピードで繰り出される。
一瞬にしてリプカのLPが吹き飛んでいく。

――You lose...

 

「…なんで私がこんな格好を…」

神姫センターからへちまガーデンに帰ると、すぐさまリプカのファッションショーが始まった。
ちまりさんと抹黄によって、完全に着せ替え人形にされている。

「ほらー、こんなのも可愛くないかな、お兄ちゃん?」

「や、止めろ、あまり上に持ち上げられると下から見える…!」

やたらと丈の短い巫女服を着せられたリプカが、必死に袴を押さえている。

「ま、マスター、やはり今の装備のままでは限界だ」

「…いや、すごい可愛いと思うけどな」

「服の話ではない、バトルロンドでの武装の話だ!」

リプカが顔を真っ赤にしている。
かなり珍しい光景だ。

「そうだな…明日にでも残りの装備が完成してないか聞きに行こうか」

「あぁ…頼む。本当に…」

リプカはまた違うワンピースに着替えさせられていた。
目にはもはや涙を浮かべている。

「売れ残りだけど、服を抹黄ちゃんに渡しておくから家でも楽しんでね」

「ありがとうございます、ちまりちゃん!」

抹黄がちまりさんから服を受け取っている。
いつの間にそんな話に…

「…マスター、頼む。私を守ってくれ…」

リプカは力が抜けたかのように崩れ落ちた。

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ちの
神姫&ドールのアイペや布服の製作だけでなく、髪パーツの自作までするマルチな淑女。
2012/9/30に亡くなりました。記事にまとめてあります。


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Threads:@nas_hechima
神姫の武装パーツや髪パーツの制作や、ブログの更新もする雄犬。
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