バトルシミュレータの中では、似た顔の神姫達が戦っていた。
私…フェリアは、このテストのデータ取りを任されている。
今日のテスト内容は、雪兎型MMS8体による戦闘テスト。
紅白に別れて、4対4のチームバトルになっている。
…個性的なみんなだけど、大丈夫なのでしょうか…?
そんなことを思いながら、私はモニターへと目を移した。
「さあ、早々に烏兎に討たれるといいのですっ!」
赤チームの烏兎さんが、白チームの雪芽さんに両手に持ったクナイで襲い掛かる。
こんなときでもウサミミケープを外さないあたりが、さすが『ぷちせれぶ』と言ったところでしょうか。
《キィンッ》
「く…っ!」
雪芽さんの短剣と、烏兎さんのクナイがぶつかり合う。
二人とも攻撃のペースが早く、剣と剣がぶつかる音が連続で続いている。
「同じような動きして欝陶しいのです、早々に消え去るのです!」
「そうは…いかないよ!」
二人のスピードはさらに増し、激しく火花が散っていく。
「がんばってー、烏兎ちゃーん!」
「雪芽ちゃん…がんばってね?」
何故か仲良く観客かのように観戦に回っている赤チームの兎雪さんと、白チームの愛雪さん。
…えーと、戦闘テストだと言うことはお伝えしたはずなのですが…
「ほほう…敵を捕らえておいたのか、さすがだな。我に仕えてみるか?」
「…へ?」
そんな二人のところに、一人の人影が現れた。
黄色の髪に赤い耳、あの方は…
「そんなところでぼーっとしてるなど…我に倒されたいと言っているようなものだぞっ」
愛雪さんのところに、敵である赤チームのユズリハさんが現れる。
武器を構えると、愛雪さんへと飛び掛かる。
「…きゃっ!?」
「危ないっ!」
ブースターで飛んできた雪芽さんが、愛雪さんは突き飛ばし守る。
「ほう…なら我の相手はお前がしてくれるのだな?」
「烏兎との決着も早々につけるのです!」
「くっ…!」
雪芽さんの前に、烏兎さんとユズリハさんが並ぶ。
二対一になった雪芽さんは、少しずつ押されていく。
「雪芽さん、ここは一旦退くべきです」
「卯さん…わかった!」
上空に空を飛ぶ神姫が現れる。
雪芽さんと同じ白チームの卯さんだ。
索敵性能に優れた彼女が、上空から動きを探っていたらしい。
「一度退けば七雪さんと連携し…っ!?」
「やっほぉー!!」
空を飛んでいた卯さんの翼の上に、突如として白髪の神姫が現れる。
あれは…
「みんなのアイドル、卯希たん、だよ!」
あれは、赤チームの卯希さんだ。
翼の上でポーズまでキメている。
あんなところまで跳べるとはさすがは雪兎型…ただ、あそこからどうするのでしょう?
「このままでは…落下!?」
翼の上に着地された卯さんは、卯希さんと共に地上に落下していく。
「たぁー!」
《ストッ》
落下直前に、卯希さんは地上へと跳び移る。
卯さんも飛行形態を解除して着地する。
「仕方ない…戦闘体制に移行します」
「…げっ。た、戦う気なの?」
武器を構える卯さんに、後ずさる卯希さん。
戦闘能力に欠ける卯さんはかなり慎重に近づくが、卯希さんはそれ以上のペースで離れていく。
「…逃げるが勝ちーっ!」
《ダッ》
突如としてダッシュで逃げる卯希さん。
…だから、戦闘テストなんですったら…
「あ、卯希たんおかえり」
「大変だったね…だいじょーぶ?」
「たっだいまー、いやー、まさかこんなに怖いとは!」
普通に座りながら卯希さんを迎える兎雪さんと愛雪さん。
兎雪さんと愛雪さんはにこやかにおしゃべりしている。
『あの…戦闘テストなので戦っていただけませんか?』
このままではデータが取れないので放送を入れる。
これではおしゃべりのログが増えるばかりだ。
「ごめんなさーいっ!」
「それは困ったね…」
卯希さんと兎雪さんが一度顔を見合わせた後、愛雪さんのほうに向き直す。
あの中では愛雪さんだけが赤チーム、絶好のチャンスのはずでる。
「…じゃんけんでもする?」
「それだぁー!!」
「いくよ、じゃーんけーん…」
愛雪さんの提案で、じゃんけんを始める三人。
…私、報告書には一体何を書けばいいのでしょうか…
「まだ倒れんとはたいした根性じゃのぅ」
「早々にうとうと眠ってしまえばいいのです!」
ユズリハさんと烏兎さんの攻撃を必死に避け続ける雪芽さん。
しかし、ダメージは明らかに蓄積していっていた。
《ズダダダダダッ》
「銃撃…何奴!?」
「しんうち、とーじょーかもっ!」
マシンガンを乱射しながら白チーム最後の一人、七雪さんが現れる。
その攻撃に、烏兎さんとユズリハさんは一度距離を離す。
「…遅いよ、七雪」
「みちにまよってた」
「…私が迎えにいくまでは本当に迷っていました」
卯さんも七雪さんの後ろからついてくる。
「でもなゆきがきたからにはだいじょーぶ。うさぎちゃん、データを!」
「はい、現在の皆さんの配置データをお送りします」
卯さんが七雪さんにデータを送信する。
索敵機である卯さんだからこそできる戦法だ。
おそらく、卯さんのデータを元に七雪さんが一斉攻撃をかける気なのだろう。
「では…」
「…ちょっと待ってください、今のデータには味方のデータも…!」
「はっしゃーっ!」
《ズガガガガガガガッ》
七雪さんの体から装備が飛び立ち、神姫たちを襲う。
四機の遠隔攻撃ビットと本体の二機のマシンガンと大型ガトリングから大量の弾丸が放たれていく。
「な、七雪!?」
「キャー!?」
「うわぁぁぁあっ!!」
その攻撃が敵味方関係なく襲い掛かる。
卯さんのデータが余程正確だったのか、攻撃を受けた神姫たちは次々と倒れていく。
《ズガガガガガ…カンッカンッ》
「…たまぎれかも、敵はまだ…あれ?」
七雪さんが振り返ると、そこには卯さんが倒れていた。
「終わったら説教ですからね…なゆきさ…ガクッ」
卯さんが言葉を言い終える前に機能を停止する。
他の神姫たちも、チーム関係なしにすべて機能停止している。
「…あれ?」
―――赤チーム WIN!!!
画面には、赤チームの勝利を示す文字列が表示されている。
…この結果を報告書にすることを考えて、私は頭を抱えた。
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オーベルジーヌ社社長
堂元 捲 様
フェリアです。これより雪兎型の戦闘テストの結果を報告させていただきます。
チーム分けは、
赤チーム:卯希 烏兎 兎雪 ユズリハ
白チーム:雪芽 卯 七雪 愛雪
となっております。
・雪芽さん、烏兎さん、ユズリハさんの三体は順調に成長しており、戦闘能力も極めて優秀。
・烏兎さんは言語データに特異性が見られるが、S.Projectによるカスタムの結果と思われる。
・卯希さんの跳躍力は驚異的で、地上から飛行中の神姫に跳び移れるほど。
・兎雪さんはチョキ、卯希さんはパーを多く出す傾向あり。
・愛雪さんは後出しをする傾向にあるが、どうやら思考速度が遅いだけの模様で、たいていの場合そのままグーを出す。
・七雪さんの位置把握能力に異常を確認。今後調査予定。
・卯さんの索敵能力は極めて高く、七雪さんとのコンビネーションにより七体もの神姫を攻撃可能。
・卯さんの七雪さんへの説教は三時間続き、翌日への延長が決定した。
PS.
今回の戦闘データは全て事実であり、私は責任は持ちません。
申し訳ありませんが、ご了承下さい。
オーベルジーヌ社 武装神姫テスト班
フェリア
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COMMENT
そうか卯希は跳べる子だったのか・・・服のイメージに取り入れよう!
卯希たんは全力でハイテンションに登場しようと思ったら、こんなことになりました(^_^;)
服に取り入れて頂けるなんて嬉しいです!兎なんだからきっと飛べると思います。
うちなんてまだまだ情報量の少ない中こうして具体的な形にしてしまうとは凄い!
ユズリハちゃんこんなに活躍させて頂いていいのかしら!?
一応基本、本家雪芽さんのスペックと同じく高機動近接戦闘というイメージではいるんですが…
なかなか構ってあげられなくて申し訳ないですわ(´・ω・`)
ううむ、うちも基本的な戦闘スタイルだけでも具体的にしていきたいですね(`・ω・´)
問題はその相手が聞く「耳」を持っているかなのですが(滝汗
でも、うちでのイメージにかなり近いのでビックリしてます。
また良かったら使ってやって下さい。
追伸
胸パーツ見つかりました。これで服着せられます。
ユズリハさんは自分もきっと近距離戦闘型だと思っていました。
ユズリハさんは雪兎型の中でもトップクラスの出没度だと思いますよ!
可愛がって下さってありがとうございますm(_ _)m
Nagisaさん>
卯さんと七雪によるオチは、卯さんの設定を聞いた時から考えていました。
卯さんと七雪でオールレンジ攻撃とかカッコいい! → でも、七雪がそんなまともな攻撃するのか…?
胸パーツ見つかったようでよかったです。楽しみにしていますねー!