「はぁっ!」
赤い髪の神姫…リプカさんが跳び上がり、紫の髪の神姫…リアトリスさんへと飛び掛かり剣を振り下ろす。
リプカさんの斬撃をリアトリスさんも剣で受け止めると、剣を払い距離を離す。
…あの剣は悟さんが試作中の物のはずですが、何故リプカさんが持っているのでしょうか…?
「…なかなかやるようですね、さすがは第八回ニコニコ町神姫トーナメント優勝者…」
「ほう、知っていて貰えるとは光栄…だなっ!」
《シュンッ》
リプカさんが肩に装備されている剣を投げ付ける。
《ズガガッ》
リアトリスさんはその剣を左手に持ったマシンガンで撃ち落とす。
右手に剣、左手にマシンガン…リアトリスさんらしい、汎用性の高い組み合わせだ。
「剣士が銃を持つか、世も末だな」
「あなたこそ、そんな小さな竜がいるとは知りませんでしたよ」
二人の顔が一瞬引き攣る。
「言ってくれるじゃないか!」
《ドシュゥゥンッ》
リプカさんが腰のランチャーが放たれる。
リアトリスさんはそのビームを最低限の動きでかわすと、リプカさんの元へと走る。
「あなたこそ、言ってくれますね…!」
《キキキキキィンッ》
二人の剣が高速でぶつかり合う。
リプカさんは肩に付いたもう一つの剣を左手に持ち、リアトリスさんは左腕に装備された盾で剣を捌く。
「剣がぶれているぞ、心に迷いがあるのではないか?」
「あなたも聞いていたより攻撃が荒いのではありませんか?」
二人は武器を構えながら一度離れる。
二人ともまだまだ余裕があるようだ。
一呼吸おくと、もう一度相手に飛び掛かった。
「…どうしたんだい、フェリア?」
「はい、リプカさんとリアトリスさんがテストバトル中です」
私…フェリアにとっては上司とも言える、堂元捲さんが話し掛けてくる。
捲さんはシミュレータの画面に目を向けると、ウッと言った感じに目を背ける。
「…フェリア、二人の戦闘スタイルはあんなだったか…?」
「…いえ、いつもよりかなりラフな戦い方です」
「リアトリスのマスターの小歩さんは?」
「先程彼女に会いに行って怒られている所を見ました」
捲さんは頭をかかえると、大きくため息をつく。
「…どうしてこの会社は個性的な人と神姫ばかりなんだろうな…」
捲さんはシミュレータの画面をもう一度見ると、私のほうに向き話しはじめる。
「…ほどほどで止めてやってくれ、あれではお互いに八つ当たりだ」
「はい、止められれば…ですが」
捲さんはもう一度大きくため息をつくと、バトルシミュレータ室を出ていった。
《パシィィィンッ》
リアトリスさんの左手のマシンガンが、リプカさんの攻撃によって飛んでいく。
そのリプカさんもランチャーを両方とも破壊され、翼も折られている。
「ハァ、ハァ、ハァ…」
「や、やりますね…」
二人とも全力を出し過ぎて息が切れている。
《シュンッ》
リプカさんが繰り出した槍の一撃を、ギリギリのところでかわすリアトリスさん。
《ゲシィッ》
「なっ…!?」
リプカさんは槍を捨て、リアトリスさんの剣を蹴り落とす。
《バタッ》
リプカさんが蹴りの勢いのまま倒れ込む。
リアトリスさんも力尽きたのか膝をつく。
「…強いじゃないか、ここまでとは思っていなかったぞ」
「…そちらこそ、ヒューマノイドを彼女にするようなマスターの神姫とは思えませんよ」
倒れていたリプカさんが立ち上がる。
「お前こそ、あんな茶番に付き合うようなマスターの神姫だとは思えないがな」
「・・・」
一度立ち上がったリプカさんだが、力が入らないのかそのまま座り込む。
「…ふふふ」
「…ははははは!」
リアトリスさんとリプカさんが二人して笑い出す。
「…本来なら、私たちが心配するのが間違っているのだろうがな」
「…ええ、本来全く不要ないらない心配です」
なんとか立ち上がったリアトリスさんがリプカさんに手を差し出す。
「…私たちの悩みは似ているのかもしれませんね」
リプカさんはリアトリスさんの差し出した手を取ると、リアトリスさんの助けを借りて立ち上がる。
「…八つ当たりして悪かったな」
「いえ、それはこちらもです」
《シュゥゥゥウ》
二人が武装を失った事によりバトルは引き分けとなり、シミュレーションはシャットダウンしていく。
「後は祈ることにするか、お互いの大事な人の…」
「ええ、大事な人が苦難を逃れ、幸せになれますように…」
シミュレーションがシャットダウンし、画面の中には真っ暗な闇が広がっていった。
後にバトルの映像を見させて貰ったけど、本当にリプカらしくない、心がぶつかり合うようなバトルだった。
その後にリプカが突然リアトリスさんと仲良くなっていたのは、こんな理由があったんだな。
リプカがこんなに想っていてくれたのなら、自分でももっと深く考えるべきだったのかもな…
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