2041年、お父さん達が子供だった頃から約30年後。
日本は変わってないようで、だいぶ変わっていた。
街では、一家に一神姫というくらい、武装神姫というフィギュアロボが流行っていた。
そういう僕の父も、武装神姫を開発する会社の社長をしている。
僕は、父の心を奪った、神姫という存在があまり好きにはなれなかった。
僕が幼い時からずっと、父は僕なんかよりも神姫を優先してきた。
僕が風邪で寝込んでいる時だって、一年に一度しかない運動会だって、
父は一度たりとも僕のそばにいてくれる事はなかった。
神姫という存在が、僕から父を奪ったのだ。
そして僕は孤独の中で、今日15歳の誕生日を迎えた。
当然、父は今日も研究所にこもりっきりでいるわけがない。
母は僕が幼い頃に亡くなってしまったらしい。
僕の誕生日を祝ってくれるのなんて、仕事だからと僕に構う人物ばかり。
メイド、執事、雑用係、教育係…そんなのに祝ってもらったって嬉しくもない。
僕は父に認めてもらいたかった。僕の存在を。
神姫じゃなく、ただ一人である僕の存在を認めてほしかった。
ただの人形にどんな価値があるのだろう…
息子の存在を差し置いてまで、構う価値が神姫にはあるのだろうか…
僕は、父からの誕生日プレゼントだという、新作の神姫が入ったケースをまたクローゼットにしまった。
最悪な誕生日 と、僕は今年も日記にそう書き残した。
翌日、僕は学校の屋上にいた。
ここまでの記憶なんてなかった。いつの間に屋上なんかに来てたんだろう?
屋上のフェンス越しに、校庭を見たら誰もいなかった。
そうか…今は授業中だったのか…
そう思った瞬間、僕は目の前のフェンスに足をかけていた。
僕なんかいなくても誰も泣かないよな…?
今までずっと一人だったんだから…
こんなにひねた性格に育ってしまったせいで、僕には友達というものは一人も出来なかった。
友達が一人でもいたら、僕はこんな事してないのかな?
僕がここからいなくなってしまったら、お父さんは僕を見てくれるかな?
僕の心がどんどん真っ黒になっていく。
そして、僕はあと一歩踏み出せば落ちてしまうというギリギリな場所に立っていた。
後悔なんかしないよ、多分。
どうせ、みんな死ぬ時は一人ぼっちなんだから。
むしろ、一瞬でも空を飛べる気持ちを味わえるという事に僕の心は躍っていた。
「ははは、僕、頭おかしいや」
笑ってるはずなのに、いつの間にか涙が出てた。
「もう、いいや」って僕が足を踏み出そうとした瞬間、
「ミニーソンっ!」
女の子の声がした。
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