どうしてこんな事に…
僕の頭の中はかなり混乱していた。
さっきまで学校の屋上で飛び降りようとしていた自分が、まさか幼なじみの女の子と神姫センターに向かっているなんて…
「ミニーソン、もう気持ちは落ち着いたかな?」
茶色の髪を二つに結った女の子の顔が、すごい近くにある。
「あ、う、うん…」
まともにちまりちゃんの顔を見る事が出来ない。
こういうのが女の子にドキドキするっていう事なのかな。
「ミニーソンてば、ホントにちょっと変なんだからぁ…あ、もう神姫センターについたよ!」
ちまりちゃんは挙動不審な僕を見てクスッと微笑むと、いつの間にか目の前にあった神姫センターに入っていく。
僕もちまりちゃんについて歩いていこうとするが、武装神姫が苦手な自分は入口の前で立ち止まってしまう。
「やっぱり僕には無理だよ…」
ちまりちゃんには悪いけど、僕は神姫なんて持ってないし、そもそも苦手なんだ。
そう自分だけに言い聞かせて、神姫センターに背を向け歩きだそうとすると…
「そうはさせないわよ!」
「姫ちゃんがそう言ってるから、駄目だもんねー!」
ちまりちゃんの神姫である、姫子さんとアウラさんに捕まってしまった。
二人はお揃いの白い羽のようなパーツを背中につけて飛んでいる。
神姫って飛べるのかぁ…と呆然と二人を見ていると、戻ってきたちまりちゃんに手を引かれ、気付いた時にはもう神姫センターの中にいた。
神姫センターの中には、僕と同じくらいの年頃の子、僕よりも小さい子、大人の人や、おじいさんな年の人まで、いろんな年代の人がいた。
「ね、神姫センターってすごいでしょ?こんなにいろんな人がいるし、すごく人気があるんだよ!」
ちまりちゃんの言葉に、二人の神姫はうんうんと頷いている。
「あんた、神姫が苦手なんてもう言わせないわよ!」
さっきまでちまりちゃんの肩に乗って頷いていた、姫子さんが僕に方へライフルの銃口を向けている。
「あ、あの…ごめんなさい…」
なんだか怖くなって、僕は思わずペコペコと頭を下げてしまう。
「姫ちゃん、乱暴はよくないよ~ますます神姫の印象が悪くなっちゃうよ~」
ちまりちゃんの反対側の肩に乗っていたアウラさんが、笑顔で姫子さんを説得している。
そんな二人の神姫の様子を楽しそうにちまりちゃんは眺めていた。
「はは、ははは…」
僕はどうしたらいいか分からず、とりあえず笑ってみた。
そんな時、僕の背中に何かが当たった。
なんだか不安になって、振り返るとそこには少しイライラした様子の僕と同じくらいの男の子がいた。
「おまっ…どこ突っ立ってんだよ、危ないだろーが!」
かなり不機嫌そうな男の子のは、僕に向かってイライラをぶつけるように怒鳴ってきた。
こういうタイプの子は苦手だよ、ホント…
「ほんと、ごめんなさいっ!」
さっき姫子さんに謝った時よりも深く丁寧に頭を下げて、僕は必死に謝り続けた。
うー、だから神姫センターになんて来たくなかったんだ…
「ちょっと~そこまで怒らなくてもいんじゃない?」
さっきまでニコニコ微笑んでるだけだった、ちまりちゃんが僕にぶつかってきた男の子に近付いていく。
はぁ…助かった…なんて、思ってしまった僕は男として最低だろうか。
「きっ、き、き、君は…!?」
声を裏返して驚いているのは、さっき僕にぶつかってきた男の子だ。
なんだかさっきまで不機嫌そうだったのが嘘みたいに驚いている。
「ちまりが何だっていうのよ~!」
「ちょっと、あたしのオーナーに何かしたら許さないわよ!」
「許さないんだから!」
手を腰にあてて、むすっとした表情のちまりちゃんに、ケンカ腰の姫子さんと仕方なく真似してるアウラさん。
「い、いや…君があまりに可愛いもんだから…つい…てか、ちまりっていうんだ…」
髪をくしゃくしゃと手でかいてる男の子のは、顔を真っ赤にしてちまりちゃんの方を見ないようにしている。
この子、ちまりちゃんの事が好きなのかな?
こんな事には疎い僕でさえ、分かりやすい様子の男の子だった。
「えっと…俺、星夜!まだまだ駆け出しの神姫オーナーだけどよろしくな!」
いつまでもちまりちゃんを見る事が出来ない男の子…いや、星夜くん。
星夜くんは右手だけをちまりちゃんの方へ向けている。
「う、うん…ちまりだよ、よろしくね」
ちまりちゃんも手を差し出そうとしたその時…!
「駄目よ、ちまり!あんたにはこいつがいるでしょ!」
姫子さんの言葉に、ちまりちゃんの握手しようと差し出そうとしていた手が止まる。
「え…えと、何でしょう…」
あまりに姫子さんの声が大きかったため、神姫センターにいる人たちまで僕の方を見ている。
特に星夜くんからの視線が一番痛く感じるのは気のせいなんかじゃないだろう。
「くっそー…お前!許さないぞ、俺はお前を必ず倒す!」
さきほどまで顔を赤くしていた星夜くんが、今度は怒りで顔を真っ赤にしているように見える。
「ぼ、僕は関係ないですよ…ちまりちゃんとは、ただの幼なじみで…」
星夜くんの様子が恐ろしくて、わたわたとしてしまう僕。
そんな僕に向かって、星夜くんは指をさし大きな声で言った。
「神姫センターにいるって事は、お前も神姫を持ってるんだな…今から俺と勝負だ!」
星夜くんからの信じられない言葉に、僕の頭の中は真っ白になってしまった。
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