ネットワークに侵入すると、それは悲惨な光景が広がっていた。
装備が無惨に破壊され、まるで死体のように横たわる神姫たち。
白い装甲を纏った神姫が二体立っているだけだった。
「ルセル、シュクレ!」
「…マスター!」
「ぜぇ…遅いよ、さとる…」
二人とも、ギリギリ立っているといった感じだった。
敵はほとんどダメージが見られない。
「姫子さんもアウラちゃんも、水都さんも月夜さんもやられちゃった…」
「残ったのは私たちだけです…マスター、何か手はありますか?」
「…うん」
用意してきたプログラムを起動する。
星夜くんと戦う前から、ずっと作り続けていた新型のリミッター解除プログラム。
これが、僕の『最後の切り札』だ。
家を出るときに持って来ておいてよかった…通常のリミッター解除で倒せない敵を倒す手段はこれしかない。
…でもその前に、一つ覚悟を決めなくちゃならない。
「…ルセル、シュクレ」
「なんですか、マスター?」
このプログラムの問題点、それは…
「…このプログラムは、二人のリミッター解除をシンクロさせるプログラム。
二人の意識を一つにして、二人で一人になる。でも…」
「でも…?」
ルセルが聞き返してくる。
「…二人の人格を一度一つにするから、解除した後にまたちゃんと二人に戻れるかわからない…
もしかしたら、二人の人格が崩壊してしまうかもしれない。
二人がお互いの事を全て分かり合えていたら大丈夫なはずだけど…」
このプログラムは、二人が双子だからこそのプログラム。
でも、危険性は高い。
あまり使いたくはなかった…
「…それなら、大丈夫ですよ」
シュクレがニッコリと微笑んだ。
「私はお姉さまのことを誰よりも愛しています」
「…ぼくもシュクレのことは信じてる、それになにより…」
ルセルとシュクレが同時にこちらを見る。
「さとるを想う気持ちは、二人とも一緒だからね」
「はい、心配なさらずにお願いします、マスター」
…ルセル、シュクレ…
「…わかった、行くよ!」
「うん、後はさとるに任せるよ!」
プログラムを実行する、後は二人を信じるだけだ。
「やっと俺達の出番だな!」
「う、うん!」
ラパンとトルテュもネットワークに侵入し、二人のところに駆け付けた。
『リミッター解除』
「…シュクレが…入ってくる…!?」
「これがお姉さま…?」
意識が混ざる違和感に二人が反応する。
「「…!」」
二人の体から装備が外れ、周りに浮く。
ルセルの左目が緑に、シュクレの右目が赤に変わる。
プログラムが正常に動いた証拠だ。
「「…行きます!」」
二人は装備とともに浮かび上がり、敵に突撃する。
敵はランチャーの発射体制に入っている。
≪バシュゥゥン≫
前にいたルセルが、シュクレの左肩の盾を装備し身を守る。
その間にシュクレは武器を合体させ、ブランノワール・シス ランチャーモードを構えていた。
≪ズキュゥゥンッ≫
長大な氷柱が、敵のブースターを打ち抜く。
姿勢を崩した敵に、ルセルがジュレールティーアで追撃を放つ。
≪ドゥゥゥン≫
敵は落ちていたアウラさんのランチャーを盾にし、ランチャーが破壊された。
吹き飛ばされた先には、シュクレがラパンをクローにして構えていた。
これが、僕が作った二人のためのリミッター解除プログラム。
意識を一つにして、最高の連携を行うことができる。
双子である二人だけが使える力。
≪キュイイン≫
クローで掴まれた敵は、ドリルによってさらにダメージを受ける。
≪ドオォォンッ≫
敵に爆発が起こる。
…煙がおさまると、素体状態に剣だけを装備した敵が現れた。
「もうちょっとだよ、頑張れ!」
ルセルとシュクレがこちらをちらっと見る。
その口元は、少し微笑んでいるような気がした。
敵は剣を構えながら、近くにいたルセルに迫る。
そのスピードは全く落ちていない。
「「これで…」」
ルセルは斬撃をギリギリでかわすと、トンファーを一つ取り敵を下から上に吹き飛ばす。
シュクレは上でKS製大槍を構え、下に投げ付ける。
「「とどめですっ!!」」
大槍が突き刺さり、敵はまた下に落下する。
下からは、ブランノワール ランスモードを構えたルセルが飛び上がった。
「「はぁぁぁあっ!!」」
ルセルの槍も、下から敵を貫いた。
その瞬間、ネットワークは全てが真っ白になり、敵も消滅した。
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