「…一体あいつはなんだったんだろうね」
戦いが終わり、僕たちはまずちまりちゃんたちがいるはずの職員室へと向かい始めた。
ルセルの疑問はもっともだ…
あいつが一体何者だったのか、見当もつかない。
「おじいちゃんって言ってましたね、そしてマスターそっくりの声…」
「意外と、未来から来たさとるの孫だったりしてね」
ルセルがクスクスと笑う。
…それはないと言いたいところだが、ここまで意味がわからないとそうも言えないな。
「クラウディさん…本当に消えてしまったんでしょうか」
「…そうだったとしたら悲しすぎるよ…」
クラウディさんは、自分で助からないと言っていた。
そして、みんなへの呼び方とかを考えると、クラウディさんはもしかしてレイニーさんなんじゃ…
…いや、これは2人には言わないでおこう。まだ確認できたわけでもないし…
「…でもクラウディさんのおかげで今回の戦いは勝てたようなものです。
敵は最初からダメージが残っていました」
「うん、最初から僕たちだけだったらきっと…」
フェローネは神姫センターにいたときより明らかに強かった。
今回勝てたのも奇跡のようなものだった。
…本当にすさまじい戦いだった。
「ミニーソーン!」
「ちまりちゃ…うわぁぁぁぁあ!?」
ちまりちゃんが廊下の向こうから走ってくると、そのままの勢いで僕に抱きついてくる。
「いてて…吹き飛ばさないでよ、さとる…」
「大丈夫ー?」
ルセルの元にアウラさんが飛んでくる。姫子さんもちまりちゃんの周りを飛んでいる。
よかった…2人とも無事だったんだ。
「よかった…心配してたんだよ?」
ちまりちゃんが抱きつきながら話しかけてくる。
その目には涙が流れたような後が残っている。
「うん、ありがとう。ちまりちゃんたちのおかげだよ」
ちまりちゃんは照れながら少し笑った。
「あらあら…ラブラブねー」
「ねー」
ちまりちゃんが来た方向から美音ちゃんも現れる。
ゆきうちゃんたちも一緒だ。
「ちまりちゃんって意外と大胆なんですね…」
雪卯さんは何故か照れている。
…ってそうだ、ちまりちゃんが抱きついたままなんだった…
「ちまりちゃん…一度どいて…」
「…あ、ミニーソンくん、ごめんね!」
ちまりちゃんが慌てて僕の上からどいてくれる。
危なかった、こんなところを星夜くんに見られたら…
「…ずいぶん残念そうな顔をしてるな」
「…って、星夜くん!?」
僕の顔の上から覗きこむように星夜くんが見ていた。
「俺の方も水都と月夜が戻ってきたから様子を見にきたんだ。そうしたら…」
「へっ…女に抱きつかれてヘラヘラしてるようじゃ、ろくな大人にならねーな」
月夜さんが、星夜くんの肩からいかにも馬鹿にしているかのような顔で見てくる。
…そんな顔してたのか、僕は…
「…みんな無事でよかったですね」
「うん、これでいつもどおりだね」
ルセルとシュクレの言うとおり、これでいつもどおりの風景だ。
僕たちの戦いは終わったんだ…
「…って、なんだあれ!?」
「ゆ、UFO!?」
星夜くんとラパンが窓の外を見て叫んでいる。
外を見てみると、そこには宙に浮かぶ円盤のようなものがあった。
≪シュゥゥゥンッ≫
突然目の前が真っ白になるほどの光を発すると、円盤はどこかに消え去ってしまう。
…あれに今回の敵が乗っていたんだろうか。
たしかに未来がどうとか言っていたけれど…
「…写真撮っておくんだったなぁ…」
ちまりちゃんが残念そうに呟いている。
この様子だと、警察にも原因はわからないんだろうな…
「まさかおじいちゃんがあんなに強かったなんて…」
僕たちはタイムマシンに乗ると、未来に帰るためにマシンを起動する。
フェローネたちの力でも、倒しきれない相手がいるなんて…
…一体はダメージが多すぎて、逃げるときに置いてくる羽目になってしまった…ひぃじじいに怒られるかな。
「まぁいいや、これも歴史どおりってところで…」
マシンは光に包まれ、時空移動モードに入る。
「…いつか必ずリベンジしてやるからな、おじいちゃん」
「…帰ろうか、みんな。
僕たちにできることはもうなさそうだし…」
後始末はきっと警察とかがしてくれるだろう。
子どもの僕たちにもう出番は無い。
「あら、リーダーみたいじゃない悟くんー♪」
「かっくいー!」
「素敵ですよ、悟さん」
冗談みたいに茶化す美音ちゃんと、ゆきうさんと雪卯さん。
「…ま、その通りだな。悟に言われるのは悔しいが…」
「ようやく休憩できるのか…長い戦いだったな」
「俺はまだまだ戦い足りねーけど…」
なぜか悔しがる星夜くんと、水都さんと月夜さん。
「うん、休みのときまで学校になんていたくないよー」
「ちまり、帰ったら宿題が待ってるわよ」
「えー、ちまりちゃんと遊びたいよー」
ニコニコと笑っているちまりちゃんと、姫子さんとアウラさん。
「うっし、さっさと帰ろうぜ」
「うん、まだ敵とかいたら嫌だし…」
動きからして機嫌の良さそうなラパンと、まだ怯えているトルテュ。
…みんながいなければ、僕たちは勝つことなんてできなかっただろう。
みんながいてくれてよかった…
僕にとって、初めて自信を持って”友達”と言える仲間たちだ。
「…さとる、行こうよ!」
「マスター、行きましょう!」
ルセルとシュクレを肩に乗せ、僕たちは外へと歩き始める。
外は、雲ひとつ無いくらいの晴れが広がっていた。
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