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なすへちま農園ブログ


武装神姫とかFAガールとかメガミデバイスとかドールとか
目次 | キャラクター紹介 | 用語集

僕の自己紹介をなんとか終えると、ようやく他の人の自己紹介を見る余裕ができた。

「は…はじめまして、僕は林 葉樹です!
母が…その…武装神姫のデザインをしている会社で働いていて、機械のデザインに興味を持ちました。
えーっと…よ、よろしくお願いします!」

誰かの自己紹介が起こるたびに、ぎこちない拍手が起こり、自己紹介をした人は照れ臭そうに席に戻っていく。

「えーと、では次は…ミリア・ベルベットさん」

「はいデース」

…外国人?珍しいな…
そう思いながら黒板の前を見ると、僕は度肝を抜かれた。

「ワタシ、ミリア・ベルベットと言いマース。リュージ王国から留学してきマシタ」

そこには、明らかに十代前半の少女が立っていた。
腰まであるのではないかという金髪に、くりっとした青い目がかわいらしい。

…ってそうじゃなくて!
なんで高校にあんな子が?

「…ここは先生が説明しよう。
彼女はミリア・ベルベットさん。
フィンランドで極めて優秀な成績で、11歳で高校まで飛び級したんだ」

クラス中に衝撃が走る。

「…ここだけの話だが、この高校の入学試験も、国語を除けばトップだ。
国語を入れた総合成績でも二番目だった」

…所謂「天才」という人か…

「皆さんより歳は下ですケド、その分頑張って勉強しマース。よろしくお願いしますネ」

クラス中に向かって、にこやかな笑顔を見せるベルベットさん。

「…!」

ベルベットさんと目が合うと、僕に向かってウィンクした。
…気のせいだろうか…



「さとる、今日はお疲れ様ー」

学校の帰り道、ルセルが僕に労いの言葉をかけてくれる。
たしかにちょっと疲れた…ベルベットさんの衝撃もあったけど…

「また神姫さんとおしゃべりデスカ?」

突然目の前に金色の髪が現れる。
…って、ベルベットさん!?

「年下に話し掛けられて、そこまでびっくりすることないデスヨ」

ベルベットさんはケラケラと笑っている。

「ワタシ、ミリア・ベルベットって言いマース。ミリィって呼んでくださいネ、さとるさん」

「よ、よろしく、ベルベットさん」

「ミリィでいいデスヨ」

僕の反応に、またケラケラと笑っている。

「神姫さんたちもはじめマシテ!」

「は、はい、ぼくルセルだよ!」

「はじめまして、シュクレと言います」

すっかりパニックになっているルセルと、それを見てむしろ笑顔になっているシュクレが挨拶する。

「白魔型すのーふれーくデスカ、珍しいデスネー」

白魔型を知っているのか?
外国人なのに、そのほうが珍しいような…

「ワタシ、武装神姫大好きですから、たいていの神姫は覚えているんデスヨ」

ミリィさんが自慢げに笑っている。

「ちょっとプリンセス、わたくしも紹介して頂けないかしら?」

「あ、ベーチェルごめんなさいデスヨ」

ミリィさんの背中から空を飛ぶ神姫が現れる。
あれは…鷲型MMSラプティアスだ。

「わたくし、プリンセスに仕える神姫である、ベーチェルと申します。以後お見知りおきを」

「はじめまして、ベーチェルさん」

「ルセルだよ、よろしくね」

ベーチェルさんの挨拶に、シュクレとようやく落ち着いたらしいルセルが挨拶を返す。

「今日、自己紹介のとき、神姫さんとおしゃべりしてましたよネ?」

「み、見てたの…?」

「はいデース」

それは恥ずかしいところを見られたなぁ…
ちょっと頬が赤くなる。

「ふふ、神姫さんと仲良しなのは良いことデース。恥ずかしがることないデスヨ」

ニコニコと、純粋そのものと言った感じの笑顔で見つめてくる。

「さとるさん、これからどこにいくつもりデスカ?」

「えっと…神姫センターに行こうかと思って」

そう答えると、ミリィさんはさらに嬉しそうに跳びはねている。

「ワタシ、神姫センター行きたかったデース。案内してくれまセンカ?」

「…プリンセスは日本に来たばかりで、道がさっぱりわかりませんの」

なるほど…それなら案内してあげたほうが良さそうだな。

「わかったよ、神姫センターまで案内するよ」

「ありがとうデース」

ミリィさんはニコニコしながらお辞儀をすると、僕の隣に立ち、一緒に歩き始める。
…しかし、この状況って端からみると、何に見えるのだろう…
幼女誘拐…とかじゃないよな…





「ここが神姫センターだよ」

「おおー、リュージとは雰囲気が違いますねー」

ミリィさんは走って中に入っていくと、神姫センターの中をぐるぐると見回す。
…ああしてる分には、ただの11歳なんだけどな…

「ベーチェル、早速腕試しデスヨ」

「プリンセス、その前に神姫オーナーズカードの登録です」

「…そうデシタ」

神姫オーナーズカードというのはバトルロンドをするために登録するカードで、世界共通のものである。
ブルー、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナと、ランキングの順位によって色が変化する。
ちなみに自分は少し前にシルバーになったばかりだ。

「受付さん、リュージ王国のカードの登録をお願いしマース」

「はい、リュージ王国の…これは、プラチナカードですね」

受付の人の口から、衝撃の単語が飛び出す。
プラチナ、カード…?

「ミリィさん、プラチナカードって…」

「さんはいらないデース。プラチナカード、見マスカ?」

ミリィさんがカードを手渡してくる。
間違いなくプラチナカードだ。

「プリンセスはリュージ王国バトルロンドランキングで、3年連続トップなのですわ」

「ただ単に競技人口が極端に少ないだけデース」

理由はなんにせよ、3年連続トップというのはすごいな…
天才というのは伊達ではないらしい。



「プラチナカードだって…?」

僕が呟くような声に気付き振り向くと、そこにはピンクの髪をした少年が立っていた。
歳は十代前半に見える。

「どうしたデスカ?」

ミリィさんが僕とピンク髪の少年を見比べる。
ピンク髪の少年は、ミリィと目があった瞬間に顔を真っ赤にして凍り付く。

「な、なな、か、可愛い…」

どうやらミリィの可愛さに負けたらしい。
ピンク髪の少年は、顔を隠すように逃げていってしまった。

「今の人、さとるさんによく似てましたネ」

言われてみれば…あんなピンク髪の親戚はいないはずなんだけれど。
なんだったんだ、今のは…



「そうだ! さとるさんが日本で初めての相手になって欲しいデース」

「プリンセス、このような下賎の者とは…」

「ベーチェルは黙ってるデース、いいですよネ?」

ミリィさんが笑顔で顔を覗き込んでくる。
…勝てる気はしないけど、いい経験にはなるかな…
何たって、国のチャンピオンだもんな。

「うん、お願いするよ」

「やったデース! さとるさん、大好きデース」

この笑顔で来られたら、とても断れないって…

「ルセル、お願いしてもいいかな?」

「うん、わかったよ!」

ルセルを手に乗せると、バトルロンドの機械へと連れていく。

「マスター…また、お姉さまなんですか」

「どうしたの、シュクレ?」

「い、いえ、お姉さま、頑張ってくださいね!」

シュクレが一瞬淋しそうな顔をしたかと思うと、すぐに元に戻った。

「よし、行くよ、ルセル!」

「うん!」

ルセルが機械の中に入っていく。

「お姉さま…私は…」

シュクレが小声で呟いたのが聞こえた気がしたが、シュクレを見ると笑顔に戻っていた。
少し無理をしたような、笑顔で…

僕は、この時に気付くべきだったのかもしれない。
シュクレの異変に、その違和感に。
それが、いつか引き起こす事態に。
僕は、気付くべきだった。

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ちの
神姫&ドールのアイペや布服の製作だけでなく、髪パーツの自作までするマルチな淑女。
2012/9/30に亡くなりました。記事にまとめてあります。


ちっぽ
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Threads:@nas_hechima
神姫の武装パーツや髪パーツの制作や、ブログの更新もする雄犬。
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