「なぁ、さとるって名前どうやろ…?」
「え、男の子って分かってるのかい?」
「まだはっきりしてへんけど…そんな気がすんねん…」
「いい名前だね、意味とかあるの?」
「あんたの名前、まくるに何となく似てるからな…」
「そんな風に言われたらなんか照れちゃうな…」
「べっ別にあんたの名前を褒めてるわけやないで…ただ、あんたよりもっと明るくて賢い子になってほしくてやな…」
「ありがとう…風花」
・
・
・
・
「捲…ごめんな…あたしのせいや…さとるいなくなったの…」
「風花、君は間違ってない…さとるは自分の命を犠牲にしても風花の病気を知らせてくれた…だから…」
「もうあかんと思うわ…さとるをこのまま一人にはしておけへん…」
「風花っ!!」
・
・
・
・
「捲さん…私はずっと側にいます…たとえ捲さんが彼女の事を永遠に忘れる事が出来なくても…」
「リマリア…僕は最低な人間なんだよ…だからこれ以上は…」
「さとる…いい名前ですね…きっと賢くて優しくて素敵な子になるでしょう…」
「リマリア…君っ…!?」
「ごめんなさい…でも、さとるには生きてほしい…風花さんの分も…」
「…ありがとう、一緒になろう…リマリア」
・
・
・
・
「本当にこれでよかったんですか…お兄様?」
「いいんだ、彼女には…リマリアにはやらなければならない事がある…彼女なら立派な女王様になれるはずさ」
「悟さまにこの事は…?」
「悟もまだ小さい…この話を理解するには難しい年頃だろう…」
「私、ヒューマノイドだし至らない所だらけですが…悟さまが寂しくないよう、しっかり側にいさせて頂きたいと思います!」
「ありがとう、レイニー…悟の良いママになってやってくれ」
「ひどい冗談を言うんですから…」
「ごめん、でもきっと悟も喜ぶよ」
・
・
・
・
とある神姫の記憶。
この時まだ人形のようだった彼女の、断片的な記憶。
彼らの夢だった彼女は、いつも彼らの側にひっそりとただの人形として置かれていた。
時に彼女は彼らの希望として、時に彼女は彼らの心の支えとして、未完成なままそこにいた。
「フェリアさん、どうしたんっすか?」
いつも何も考えていなそうな神姫・希歌は、いつもと様子の違う長い黒髪に銀のメッシュが入った神姫に声をかける。
「無理はよくないと思うのですよー」
特徴的な喋り方をする、緑髪の神姫は黒髪の神姫の顔色をとても心配そうに見ている。
「大丈夫ですよ…ただ、なんだかとても悲しいような温かいような気持ちがして…」
こうしてまた、黒髪の神姫はこの断片的な記憶たちを自分の胸のうちにしまった。
オーベルジーヌ社製の初めての神姫の物語。
武装神姫としては戦闘力もほとんどない彼女は、その身に様々な記録が出来るように作られていた。
そしてまだ、その能力は誰にも知られてはいない。
COMMENT