「きゃっ!?」
「お姉さま、大丈夫ですか!?」
猫型MMSの攻撃を受けて吹き飛ぶルセルを、シュクレが受け止める。
「マスター、このエリアの残りの敵は?」
シュクレの質問に答えるために、モニターの端に表示されているバトルロンドに入っている神姫の数を見る。
12体…ルセルとシュクレを抜いたら10体か。
「残り10体だよ」
「わかったよ。早く倒して他のエリアにも行こう!」
今、僕たちはシティのマップにいる。
ちまりちゃんと美音ちゃんはデザート、星夜くんはアクアのマップにそれぞれ神姫を出している。
暴走している神姫たちはもう考える力がないらしく、暴れているだけなので倒すのは難しくない。
少しでも多く機能停止させて、システムへの攻撃を止めさせないと…
「ていやっ!」
トンファーを手に持ったルセルが、横から来た犬型MMSに攻撃を加えている。
動きは単純であるが数が多い。気を抜かないようにしないと…
≪キィィィィン≫
シュクレがランチャーのチャージに入る。
そのまま間髪入れずに発射すると、前方にいた3体の神姫を吹き飛ばした。
「…あまり気分はよくありませんね」
シュクレは気乗りしなそうな顔で戦っている。
相手は暴走しているとはいえ、その辺にいる普通の神姫たちだ。
神姫たちのマスターも、モニター越しに心配そうに見守っている。
「ここは後もうちょっとだよ!」
ルセルも周りにいる神姫を斧で薙ぎ倒している。
「お姉さま、まだ油断しないで下さい」
シュクレがルセルの後ろに移動して背中合わせになる。
2人を囲むように5体の神姫が現れる。
「…シュクレ、後ろは任せるよ」
ルセルがブースターを吹かしながら前にいる神姫に飛び掛る。
トンファーを右手に持つと、前にいる神姫を弾き飛ばす。
「これもオマケだよ!」
左手に持っているロッドの先端の爆弾を外すと、地面を滑らせるように投げつける。
≪ドオォォン≫
爆発で神姫が何体か吹き飛んでいく。
ルセルはそのまま向きを変えると、次の神姫に飛び掛った。
シュクレもルセルの動きに合わせてライフルを構える。
前にいる神姫の足を撃ち動きを止めると、横の神姫に狙いを変える。
「次はあなたです!」
今度は手に持っている武器を撃ち落とす。
武器が無いままに突撃してきた神姫を盾で防ぎ、そのまま押し返す。
「はぁっ!」
ライフルを剣に持ち替えると、向かってきた神姫を一閃する。
敵の神姫はその一撃で動きを止めた。
「シュクレ、これで全部だよ」
「はい、他の方たちが気になります…」
ルセルたちがいるマップの神姫は、全て動きを止めていた。
他のマップの神姫たちもほぼ機能停止することに成功したようだ。
「うん、早くみんなと合流…」
≪ドオォォォンッ≫
2人に突然黒い球体のような物が飛んできて爆発する。
「なにこれっ!?」
「…いました、あそこです!」
シュクレが指差す先には、黒い神姫が立っていた。
手の先に先ほどと同じ黒い球体を発生させると、また2人に向かった投げ飛ばす。
「させませんよ!」
シュクレはライフルを構えると、黒い球体に狙いをつける。
≪ドオォォォン≫
黒い球体は空中で爆発する。
その爆風に向かってルセルは飛び出し、敵に向かって一直線に飛んでいく。
「…意外とやるようですね」
「…お前…誰だ!?」
ルセルが黒い神姫に話しかける。
黒い神姫は腰ほどに伸びたツインテールを揺らしながらクスクスと笑っている。
「私はアイニ…これからはよろしくね?」
アイニと名乗った神姫は両腕の先に黒い球体を発生させると、それぞれルセルとシュクレに投げつける。
ルセルは方向を変え回避し、シュクレは再びライフルで打ち落とす。
「神姫の暴走はあなたのせいなんですか!?」
「ええ、私だけ…じゃないけどね」
アイニは円を描くように腕を回すと、自分の周りに6つの球体を発生させる。
「今日はほんのご挨拶…また遊びましょうね」
6つの球体をそのまま6方向に放つと、画面を覆うほどの光と爆発音に包まれた。
「…あれ、なんで…?」
画面にはエラーメッセージが表示され、ルセルとシュクレはボディの方に帰ってきたようだ。
周りを見ると、みんなの神姫たちも戻ってきたようだ。
「…くそ、神姫たちは帰ってきたけど、システムは…」
バトルロンドのシステムは完全に破壊されてしまったようだ。星夜くんが悔しがっている。
神姫センターの職員達がバタバタと駆け回っている。
「ミニーソンくん、どうしたらいいんだろう?」
「そうよ、このまま放ってはおけないわよ」
ちまりちゃんと美音ちゃんが集まってくる。
「こんな事ができるなんて、かなりのテクノロジーを持った相手ね…」
「…姫ちゃん、話が難しくて分からないよー」
「ゆきうもー」
姫子さんはがっくりしたように肩を落としている。
「マスター、お父様にご相談してみたらいかがでしょうか?」
お父さんか…たしかにお父さんなら何か知っているかもしれない…
「…みんな、僕のお父さんの研究所に行ってみようよ」
「あーら、また家にお呼ばれしちゃったわ」
美音ちゃんが何故か照れている。
…なんでここまでマイペースでいられるんだろう…
「ミニーソン、早く行こうよ!」
「悟、さっさと行くぞ!」
ちまりちゃんと星夜くんは既に出入り口に向かって歩き始めている。
「…さとる、ぼくたちも早く行こう?」
「私たちものんびりはできませんよ、マスター」
ルセルとシュクレに急かされて、僕も出入り口に向かい始める。
考えても考えても、今回の事件の原因は分からなかった。
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