「ようやく来たわね、悟くん」
ちまりちゃんとのいつもの待ち合わせだった神姫センターに、今日は美音ちゃんがいる。
「おっそーい、さとるー」
「もっと待たされたら、お仕置きねって話しをしてた所なんですよ」
美音ちゃんのバックから雪卯さん達が顔を出している。
お仕置きって何だったんだろう…とにかく間に合ったならよかった。
「美音さん、ぼくたちもいるけどいい?」
「お姉様、マスターが心配だから絶対ついていくと言っていたじゃないですか…」
「ち、違うってばぁ…ぼくはさとるなんか心配じゃないもん」
僕の肩にいる双子はいつものように仲良く掛け合いをしている。
「いいわよ、全然~今日のデートはそんなにデートって感じじゃないかもだから~」
美音ちゃんはそう言って僕にウィンクすると、ある場所へ向けて僕の手を引いて歩き出した。
「着いたわよ、悟くん運動とか別に苦手とかじゃないわよね?」
美音ちゃんに連れていかれた場所は、神姫センターから少し歩いた所にあるスポーツセンターだった。
今日は休日なので、かなりの人数の人々が来ている。
勉強はそんなに嫌いじゃないけど、運動は苦手だなぁと僕が困っていると、美音ちゃんはどんどんとスポーツセンターの中へ入っていく。
少し戸惑いながらも仕方なく美音ちゃんについていく僕たち。
「さ、これに着替えて」
美音ちゃんがようやく足を止めたのが、ロッカールームだった。
そして、美音ちゃんが僕に渡してきたのが、白い柔道着と帯。
まさかと思って美音ちゃんの方を見れば、美音ちゃんは柔道着に着替えている最中だった。
「さとるってば、変態~」
「あら、私のだったらいくらでも見てもいいですよ」
雪卯さん達に言われ、慌てて後ろを向く僕。
いくら同じ性別である美音ちゃんだけど、なんだか見てはいけないような気がした。
「あ、ルセルちゃん達の分もあるから着替えといてね」
後ろからそう美音ちゃんが言う。
確かにさっき美音ちゃんに渡された柔道着を見ると、神姫用の柔道着もちょこんと乗っていた。
「ちょっと、ぼくの着替え見ないでよね!」
「あらお姉様、かなりやる気なんですね」
僕から奪うように柔道着を引っ張っていくルセルは、いそいそと僕から見えない所まで走っていった。
そんな姉を急いで追い掛けるシュクレも、僕から柔道着を奪い去っていた。
「仕方ない…僕も着替えるとするか…」
さすがに無理ですと僕だけ逃げるわけにいかないので、仕方なく僕も柔道着に着替えた。
「ではこれから、かまきり拳法道場の訓練を始める!」
柔道着に着替えた僕たちは、スポーツセンター内の道場にいた。
そして、師範と思われる赤髪の綺麗な女の人が声を張り上げていた。
「「おっす!!」」
そこにいる人々は神姫もみんな真面目に師範と同じ動きを真似ている。
僕と同じ始めてであるルセルとシュクレは、かなり慣れた様子で師範についていっている。
「悟くん頑張って、精神統一も出来ないと神姫バトルでは集中できないわ」
僕の横で慣れた様子で師範を真似している美音ちゃんは、いつもと違ってかなりかっこよく見えた。
よし、神姫バトルに活かせるなら、僕ももう少し頑張ってみるか…
「「えいやっ!」」
広い道場に師範と弟子である僕たち神姫たちの声が響き渡った。
「今日は悟くんがいたから、かなり気合いを入れてやっちゃったわ~」
道場からロッカールームに戻った僕たちは、かなり疲れたけれど心はすごく充実した気分だった。
「アタシ、少しは男らしくしなさいって小さい頃から道場に通わされてるのよ…
おかげさまでもっと女らしくなっちゃったけど」
美音ちゃんはクスクスと笑いながらそう言うと、タオルで汗を拭っている。
「ぷはー、運動した後のヂェリカンはおいしーよねー」
「ここはお酒ヂェリカンを飲みたい所ですけど我慢我慢…」
柔道着を着たままの小さいゆきうちゃんは腰に手を当て、ジェリカンを一気飲みしている。
雪卯さんの方はちょこちょこと一緒に飲んでいた。
「ねぇ、さとる!かまきり拳法、バトルで役に立つかも!」
「それは良い考えですね、お姉様」
柔道着が似合ってるように見えるルセルは、シュッシュッと手をかまきりのように動かしながら僕に言った。
シュクレもそんな姉を見て嬉しそうにニコニコしている。
シュクレ…柔道着から胸の谷間がかなり見えている気がしたが、なんか言ってはいけない気がしたので黙っておいた。
「そうよ、よかったら使ってみてよ~かまきり拳法」
そういう美音ちゃんを見れば、もう着替えを終えていた。
「はは、そうだね…せっかくだからどこかで使おう」
申し訳ないけど、使える気はしなかったが、せっかく連れてきてくれた美音ちゃん達に悪いのでそう言っておいた。
「さとるは、これからまた神姫センターいくのー?」
まだグビグビとジェリカンを飲んでいるゆきうちゃんが僕を見ながら尋ねた。
雪卯さんの方は狙っているのか、僕がそちらを向いた途端に柔道着を脱ぎ始めた。
神姫なのにシュクレより大きい胸をした雪卯さんは、かなりスタイルもいいし見ているこっちが変な気分になりそうだ。
「ね、さとる!早く試しにいこう、かまきり拳法!」
ルセルは僕が雪卯さんに見とれているのに気付いたのか、すごい力で僕の腕を引っ張った。
ロッカールームの椅子に座っていた僕は、ルセルに引っ張られた勢いで倒れそうになる。
「お姉様ったら、またヤキモチ妬いちゃって…ほんと可愛いですね」
僕の座っている長椅子にいるシュクレは、僕の腕を掴んでいるルセルに背後から抱きついている。
「確かに今日はまだ神姫センターに行ってなかったな…これから行ってみるよ!」
僕のその言葉に美音はニコッと微笑む。
「悟くんの笑顔やっぱり好きだわ…あ、今度はアタシの家に遊びに来てよね!」
両親に紹介したいからと小さく呟いていた美音ちゃんの言葉は、多分気のせいではなかっただろう。
「じゃあ、これから着替えて神姫センター行こう!」
僕はあえて聞こえなかったフリをしてそう言うと、慌てて柔道着から着替え始めた。
COMMENT
コメントありがとうございますー。
悟 「なるほど…おカマキリ憲法か…」
美音 「ち、違うわよ~習って人たちはオカマばっかじゃないんだから~」