「ごめんね、さとる。また負けちゃって…」
「…いや、あれは相手が悪すぎたよ…」
あれも、お父さんが作った神姫なのだろうか…
「いやー、クラウディさんが相手とは、運が悪かったっすねー」
希歌さんが口に出した名前には、全く聞き覚えがなかった。
「クラウディさん…?」
「は、はい、最近テストに参加するようになった神姫で、希歌さんとリーシャさんが戦ったときは今の半分くらいの時間でやられました」
フェリアさんが答えてくれた。
たしかにあの強さは、神姫センターで見たどの神姫よりも強い。
お父さんが作ったのだとしたら、僕はいつお父さんを超えることができるんだろう…
「…お、ようやく俺のマスターを発見したぞ!」
「ほ、ほんとだー」
突然開いたままのドアから、小さなウサギとカメのロボットがやってくる。
…マスターってなんのことだ?
「わぁー、可愛いですね、この子達」
シュクレがカメのロボットを抱き上げる。
「や、やわらかいものが当たってますー」
カメのロボットが困ったようにもぞもぞと動いている。
ウサギのロボットはルセルの前に来ると、挨拶をするかのように足を上げた。
「俺はラパンだ、お前のプチマシィーンになることになったからよろしくな」
プチマシィーンってなんだ?
「プチマシィーンっていうのは、戦闘で神姫をサポートするロボットのことです…」
シュクレに撫で回されてちょっとふらふらとしているカメのロボットが答えてくれる。
「このカメさん、トルテュさんとおっしゃるそうですよ。私のプチマシィーンなんだそうです」
シュクレは既に話を聞きだしていたらしい。
これがお父さんの用意したものなのだろうか…?
「…あ、さっきの敵が装備してたのって、もしかしてこの子達!?」
ルセルに言われて僕も気がつく。
ラパンはクロー、トルテュは機関銃の方にそっくりだ。
「あぁ、あれは俺達の試作機だ」
「僕たちは変形して、武器になることができるんですよー」
なるほど、通常時は単体で戦って、場合によっては強化パーツになるってことか…
お父さんは、このことに関してはやっぱり天才なんだな…
「まだテスト中ではあるんですけど…」
「いいなぁー、ののかも新装備が欲しいっすよー」
希歌がぶつくさ言っている。
「ならなら、リーシャの装備と交換するのですよ!」
「嫌っすよー、あんな見た目装備ー」
リーシャはなんで嫌がられてるのかわかっていないらしく、ただニコニコしている。
「とにかくこれからよろしくな、マスター」
「うん、よろしくね」
ルセルとラパンも仲良くなれたようだ。
…これで2人はもっと強くなれるかな…?
お父さんのおかげなのが、ちょっと悔しいけど…
「お疲れ様、クラウディ」
「いえ…お兄様のためなら、苦でもないですよ」
私はいつもと違う小さな体で、くるっと一回りしてみる。
…うん、もう違和感もなさそうだ。
「…ルセルさんとシュクレさんに悪いことをしたでしょうか?」
「いや、この戦いは2人のリミッター解除へのヒントにもはるはずだ」
よかった…ちょっと大人気なかったかと思ってました。
「それじゃあクレイドルのほうに戻ってくれ、いつもの体に戻すから」
「はい、お願いします」
私がクレイドルに戻ると、眠るように意識が薄くなっていく。
…こんな小さな体では、お兄様のお世話はできませんね。
そんなことを考えながら、私は眠りについた。
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