「はぁっ!!」
リプカが悪魔型神姫に向かって槍を繰り出す。
悪魔型神姫はガードが間に合わず、その場に倒れた。
バトルロイヤルの中では、数十体の神姫が戦いあっていた。
最初モニターで見えたのより多そうだ。
「リプカ、後ろ来てるぞ!」
「なに!?」
《ガッシャァァアンッ》
リプカの後ろからきた神姫が黄色いボディをした神姫に弾き飛ばされる。
その両腕にはバチバチと電気が流れている。
あれは…ちまりさんのサナリアさんだ。
「ねーねー、君は味方なんだよね?」
「あぁ、私はリプカだ」
「さなはサナリアって言うんだよ」
挨拶をしている間にも次の神姫が襲い掛かる。
《ダダダダッ》
サナリアさんが両腕から電気を発しながらパンチのラッシュを繰り出す。
「かみなりパーンチっ!」
サナリアの右ストレートが敵神姫を弾き飛ばす。
小さい神姫なのに凄いパワーだ…!
「かみなりキィーック!」
次の神姫を回転しながらハイキックで薙ぎ倒す。
「私も負けていられないな!」
リプカも敵神姫に向かって蹴りを繰り出す。
リプカもすげぇ…リプカの気迫は俺からみても凄まじい。
なんであそこまで必死で戦えるのだろう…
《パァンッ》
「銃撃か!?」
「さな、遠い敵は嫌い!」
リプカとサナリアさんが敵の射撃を避ける。
《ブスッ》
次の射撃が来るかと思った瞬間、氷柱が敵神姫を突き刺した。
あの氷柱は…雪卯さん!
「遠くの敵は私に任せてください」
雪卯さんは次の氷柱を作り出すと、次の敵神姫へと投げ付けている。
「うわぁぁあっ!?」
突然サナリアさんが吹き飛ぶ。
そこには武士型神姫が立っていた。
「このっ!」
リプカが槍を繰り出すが、敵はそれを刀で軽く受け止める。
まずい、強敵が混じってやがる!?
「はぁぁぁあっ!」
その武士型神姫の後ろから黒い影が現れる。
黒い片翼に大きな爪…俺が憧れ続けた月夜さんだ。
「まったく、てめーらは相変わらず頼りねーな」
「つっきーが強すぎるんだよー」
「…だからその呼び方は止めろ」
月夜さんがサナリアさんの一言にがっくりしている。
すげー…まさかこんな近くで見れるなんて…
「はぁぁぁあっ!!」
月夜さんは大剣で次々と敵神姫を倒していっている。
「マスター、他の神姫に見とれてる場合じゃないぞ!」
「…悪い、リプカ!」
リプカも敵神姫と必死で戦っている。
多少のダメージはあるようだが、動きには問題なさそうだ。
「リプカ、あまり敵に近づきすぎるなよ。距離を取って一人ずつ倒すんだ!」
「わかった!」
リプカが敵の間を飛び回りながら槍で敵にダメージを与えている。
既に敵神姫は後僅かになっていた。
「てめーは味方なんだよな!?」
月夜さんがリプカの近くまで飛んでくる。
「あぁ、よろしく頼む」
「はっ、小さいくせに偉そうだな!」
「なんだと!?」
月夜さんの言葉にリプカが怒りを表す。
「…まぁ筋はいいんじゃねーか、戦えるのが楽しみだな」
「…言ってくれる!」
次の敵神姫へとリプカと月夜さんが飛び掛かっている。
リプカは全く気後れしていないようだ。
《ドガァァァアッ》
「これで最後だよー」
サナリアさんが倒した神姫で最後だったようだ。
モニターが真っ暗になり、神姫たちがボディへ帰ってくる。
「…これで先に進ませてくれるんだろうな、あぁ!?」
星夜さんが店員のような男の人につかみ掛かっている。
「…その必要は無くなったよ」
エレベーターのドアが開くと、そこには捲さんと悟さんが立っていた。
悟さんの手には、サナリアさんに少し似た黄色い神姫が乗っていた。
「ミニーソン!」
「悟、大丈夫だったのか!?」
「うん、僕は大丈夫だ。でも…」
悟さんの顔が俯く。
「エクレは助けられたけど、ガレットはもうここにはいないって…」
「…ガレットが…」
リプカがなんだか複雑そうな顔をしている。
そのガレットという神姫との間になにかあったんだろうか…
「…まぁまずは悟君が帰ってきてよかったわよ、ルセルとシュクレも心配してるはずよ」
「うん、ミニーソンが無事でよかった!」
美音さんとちまりさんは嬉しそうだ。
「私が悟と一緒に帰るから、みんなも帰るんだ。私たちと一緒では危険がないとは言い切れないからね」
捲さんはそういうと、悟さんを連れてビルを出ていった。
よかったぜ、悟さんが無事で…
「しかし許せないな…神姫を賭け事の対象にするなんて…」
捲さんと悟さんに続いて、俺達もビルを出た。
星夜さんが拳を握り怒りを表している。
「月夜にそんなことしやがったら、生かしておかねえ…」
「それは期待しているぞ、星夜」
月夜さんの一言に星夜さんの顔は少し赤くなったようだった。
…熱くなりすぎたんだろうか。
「…というか、お前は一体誰なんだ?」
星夜さんが俺に話しかけてくる。
「この子は赤哉君って言って、私のボーイフレンド…」
「美音ちゃん、もうそれはいいから…」
「赤哉か…俺は星夜だ、よろしくな」
星夜さんとこんな風に話すことがあるなんて…!
俺はテンションが上がりすぎて、うまく話せなくなっていた。
「じゃ、俺の家はこっちだから」
星夜さんは俺達とは違う方向に歩いていってしまった。
まずい、連絡先くらい聞いておけばよかった…!
「アタシたちはここで右に曲がるけど、赤哉くんは?」
「あ、俺は左です!」
「そっかぁ…バイバイ、赤哉くん!」
美音さんとちまりさんも一緒に別方向に行ってしまった。
最後には俺だけが残された。
「…タコ焼きでも買って帰るか」
「あぁ、早く帰らないと夜になってしまうぞ」
俺は肩にいたリプカを胸ポケットに移すと、家へと歩きはじめた。
…あ、抹黄をどこかに置いて来たからメールしておこう…
「…父さん、新素材のデータを渡してしまってよかったんですか?」
僕…悟は父と共に車で家に向かっていた。
「お前に比べたら大事でもなんでもないさ」
父はようやく少し落ち着いたようだ。
表情が少し柔らかくなっている上に、柄でもないことを言っている。
「でも、あの素材を使ったイリーガル神姫を作られたら…!」
「それはこれから対策を考える、あの素材は私と奏たちが作った子供のようなものだからな」
父の表情が再び引き攣る。
「奴らにオーベルジーヌ社の底力を見せてやるさ」
父が、今までで一番頼りがいのある風に見えた。
たしかに、戦いはこれからだ。
…ガレットを救い出さなくてはいけない。S.Projectにメンテナンスに帰っているルセルとシュクレを早く受け取りに行かなくては…!
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